イラン最高指導者、核兵器「製造・使用せず」 首相に
【テヘラン=島田学】安倍晋三首相は13日、イラン最高指導者のハメネイ師と約50分間、会談した。ハメネイ師は「核兵器の製造も保有も使用もしない。その意図はないし、すべきでない」と表明した。首相は会談後、記者団に「平和への信念を伺うことができた」と評価した。
テヘラン市内の最高指導者事務所で会談した。日本の首相がイランの最高指導者と会談するのは初めてだ。日本外務省によるとハメネイ師が主要7カ国(G7)首脳と会ったのは2016年4月のイタリアのレンツィ首相(当時)との会談以来。緊張緩和を目指す姿勢のあらわれとみられる。
首相は「軍事衝突は誰も望んでおらず、現在の緊張の高まりを懸念している」と米国との対話を促した。会談後、記者団に「トランプ米大統領がどのような意図を持っているのか私の見方として率直に話した」と明かした。トランプ氏は事態のエスカレートを望んでいないとの認識も示した。
イランメディアによるとハメネイ師は首相に「あなたの誠実さと善意を疑いはしないが、トランプ氏をメッセージを交換するに値する人物とみなしていない」と答えた。ハメネイ師は国内で保守強硬派寄りの立場だ。
駐イラン大使の経験もある斎藤邦彦元駐米大使は「最高指導者のハメネイ師が『核兵器の製造の意図はない』と発言したのは意味がある」と指摘した。「イランはウラン濃縮は平和利用と主張してきたが、米国などから疑いの目を向けられてきた。敵対するサウジアラビアやイスラエルなど周辺国を含め、評価するのではないか」と話した。
イランは5月、米欧などと結んだ核合意の一部履行停止を表明。7月初旬までの60日以内に、原油や金融取引の制裁緩和で進展がなければ、高濃度のウラン製造を再開する方針を示し、米国との対立が深まっている。
首相は1983年、父・安倍晋太郎外相のイラン訪問に秘書官として同行した。その際、当時大統領だったハメネイ師と会っている。今回の会談でも話題になったという。