老後資金問題 自民、参院選控え早期幕引き
自民党は11日、金融庁金融審議会がまとめた老後資金には2千万円が必要との報告書について、党本部に金融庁幹部を呼んで撤回を求めた。夏の参院選で争点になるのを懸念し、早期の幕引きを図った。野党は年金制度の問題と絡めて政府の追及を続け、選挙戦でも訴える構えだ。
自民党の二階俊博幹事長は党本部で記者団に、報告書の撤回を求めた理由について「参院選を控え候補者に迷惑を及ぼさないよう党として注意しないといけない」と語った。岡田直樹参院幹事長代行は記者会見で「迅速に対処した。国民の不安を払拭する意味で適切な措置だった」と述べた。
自民党は報告書の試算を「年金制度とは別問題」(二階氏)と位置づける。菅義偉官房長官も11日の記者会見で、報告書が金融審議会の民間委員が作成したものだと説明し「議論の過程の段階のもの」と説明した。
第1次安倍政権の2007年参院選ではずさんな年金記録管理を巡る問題を野党に追及されて大敗を喫した。年金問題は国民生活に直結し、首相の辞任やその後の政権陥落につながった経緯があるだけに危機感が強い。
公明党の山口那津男代表は11日の記者会見で「年金の不安をあおるような言動は罪深い」と追及を強める野党の対応に不快感を示した。
一方、立憲民主党の辻元清美国対委員長は「最大の参院選の争点になる。あらゆる世論調査でも関心が一番高いのは社会保障だ」と語った。国民民主党の玉木雄一郎代表も「年金財政の現状を隠さず説明し、対応策を示していくのが政治の責任だ」と指摘した。老後資金が年金だけでは不足するとの報告書の内容に基づいて政府に説明を求め続ける方針だ。