久保建と3バック、切り札増やした森保ジャパン
サッカー日本代表が9日の国際親善試合でエルサルバドル代表に2-0と快勝した。永井が代表初ゴールを含む2得点。後半途中から久保建(ともにFC東京)が出場し、18歳5日という史上2番目の若さで代表デビューを果たしたほか、5日のトリニダード・トバゴ戦(0-0)ではぎこちなかった3バックの運用もぐんとスムーズに。実り多き一戦となった。
もともと3バックは、森保監督がかつて指揮した広島で好んで用いたシステム。長らく4バックに親しんできた日本代表でも、この古道具を持ちこむ時期をはかってきたフシがある。
9日の試合では初トライの5日より、3バックの動きがよほどこなれていた。前線の3人が口火となるプレスの連動もまずまず。ボールを追って守備網を横滑りさせ、自陣に大きな穴をつくらなかった。
「(現時点では)4バックがメインでは」と監督は語っているが、3バックならではの利点もある。MFが両外に張り出すため、4バック時よりもサイドの高い位置で三角形ができやすい。例えば右で起点をつくり、相手を食いつかせれば左大外で原口(ハノーバー)がフリーになれる。「サイドチェンジの質を上げれば局面を打開できる」と冨安(シントトロイデン)。ピッチの横幅をフルに活用できる。
他方、守りには神経を使う。サイドで味方を余らせた分だけ、人口密度の薄いエリアができる。特に最終ラインは相手攻撃陣と同数の関係になりやすい。「カウンターをきちんと防がないと致命的」と柴崎(ヘタフェ)は気を引き締める。
もっとも、森保監督の狙いは3バックそれ自体にはないようだ。相手の出方に応じて変化し、隙を突く。そのために戦い方に幅を持たせたい考えだろう。「絶対にこれ、というのはない」と語る監督が「3か4か」という"神学論争"に加わることはない。
久保建という新戦力をフル代表のグループに招き入れたのは、3バックよりも大きな収穫かもしれない。出場時間は約30分。その間、自分を追い越す室屋(FC東京)をパスでゴール前に誘導し、中島(アルドハイル)のドリブルスピードを殺さないように配慮の行き届いたリターンを届けている。
ひとりだけ見えている場所が違う。久保を経由すると、思いがけないところからゴールへの道が切り開かれていく。
鉄は熱いうちに打て。デビューしたての18歳を南米選手権(14日開幕、ブラジル)という火事場に放り込むことへの不安はあるが、将来性という掛け値を抜きにしても、久保建をしのぐジョーカーはいまの日本に見当たらない。
(岸名章友)