インド中銀副総裁、「段階的に金融市場を開放」
インド準備銀行(中央銀行)のヴィラール・アチャリャ副総裁は10日、都内で講演し、インドの金融市場について「外国人などへの開放を段階的に進める」と表明した。外国人がインド国内で為替取引がしやすい環境を整えるための検討会について言及し、金融分野での規制緩和を進める考えを示した。
アチャリャ氏は同日にインド経済研究所(榊原英資理事長)が主催した「インド経済シンポジウム 2019」で基調講演した。「投資の利便性を高め、(外国人投資家を)もっと呼び込みたい」と強調した。具体的に為替取引の規制緩和を挙げ、専門家などを交えた検討会を設けたことを明らかにした。
同氏は、インドで近年、外国人投資家の存在感が強まっているとの認識を示した。インド国債の保有者は2007年には同国商業銀行が約50%で最多だったが、最近では40%程度に保有比率が下がっている。「外国人の保有比率も5~6%まで増え、債券市場の投資家は多様化している」と指摘した。
インド政府統計局が5月31日に発表した19年1~3月期の実質国内総生産(GDP)の伸び率は5.8%と5年ぶりの低水準だった。これに対し、アチャリャ氏は国際通貨基金(IMF)などが19年以降に7%以上の成長を予測していることを紹介し、高成長の維持に自信を見せた。
インドではモディ首相が総選挙で勝利し、第2次政権が発足したばかり。シンポでは新政権の行方や課題について議論するパネル討論を開いた。日印企業の動向に詳しいバルビール・シン弁護士は「7%以上の高成長は維持するだろうが、金融部門の不良債権問題に取り組む必要がある」と述べた。
印格付け会社のチーフ・エコノミスト、ダールマキルティ・ジョシ氏は新政権は「インフラ開発や土地収用など、これまでの課題に積極的に取り組む」との見方を示した。モディ首相と安倍晋三首相が良好な関係にあるとも指摘し、モディ体制の継続は日本企業にとって有利になると語った。
三菱UFJ銀行顧問の倉内宗夫氏は日本の中小企業がインドに投資しやすい環境を整備するため、インドへの投資窓口を日本国内に設けることを提案した。