米中、さや当てG20でも 世界経済「年後半回復」に影
20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が8日、福岡市で開幕し、「世界経済は年後半に持ち直す」との基本シナリオを踏襲した。だがすべては「米中次第」というのが実情だ。議長国の日本は景気の下振れリスクに対応しようと訴えるが、米中は本来結束の場であるG20の場でも、さや当てを続けている。世界経済は難路にさしかかっている。
「下方リスクを抱えながらも年後半から来年にかけて回復する見込みだ」。麻生太郎財務相は初日となる8日の討議で、世界経済の見通しをこう話した。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ停止が新興国を含めた世界経済を下支えし、中国政府による大規模減税などの効果が徐々に現れるというのが主な理由だ。
だが米中対立の先行きは見通せず、「特に貿易で依然として不確実性は残っている」(日銀の黒田東彦総裁)。国際通貨基金(IMF)は米中間の関税合戦が激化すれば2020年の世界経済の成長率は0.5ポイント下押しされる可能性があると指摘する。それでもIMFは、世界の成長率が19年の3.3%から20年に3.6%に加速するという4月にまとめた見通しを基本的に変えていない。
トランプ米政権の動向や中国の対抗策は読みにくく、「政治情勢は日ごとに変わる」(日本の同行筋)。トランプ米大統領がメキシコへの関税発動の見送りをツイッターに投稿したのは、ムニューシン米財務長官も参加するG20の関連シンポジウムが福岡市で始まった直後だった。各国は下振れリスクが増しているとの認識は共有するものの、影響を読み切れず「年後半持ち直し」のシナリオを保った面がある。
議長国の日本はG20が協調して課題解決に取り組むべきだと訴える。ただ報復関税の応酬を続ける米中が歩み寄る気配は全く見えない。ムニューシン氏は8日、記者団に「米経済に貿易問題による下振れの兆候はみられない」と強調。一方、中国人民銀行の易綱総裁はブルームバーグの取材に、貿易摩擦が激化したとしても中国の金融政策は「調整の余地が途方もなく大きい」と答えた。
G20の枠組みが本格的に始動した08年の米リーマン・ショック当時は「目の前の火消しに結束して取り組むという明確な目的があった」(日本の財務省幹部)。約10年を経て、米中の首脳や高官が顔をあわせて世界経済が抱える共通問題に取り組むという意気込みは感じられない。
英国の欧州連合(EU)離脱、イランと米国の緊張など世界にリスクは拡散し、さらにトランプ大統領は中国からの全輸入品を対象にした第4弾の制裁関税の可能性もちらつかせる。一方、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は7日、訪問先のロシアでこう演説した。「反グローバル化や覇権主義、強権政治の台頭に伴い、国際社会が直面する新たな課題や試練が日々増えている」。両者の隔たりは大きい。