「スズキ、不正を本社も把握」 国交省指摘
過料、最大の1.9億円も
国土交通省は7日、完成車検査で国の基準を逸脱した試験をしていたとして、スズキに再発防止を勧告し、重点監視対象とする方針を伝えた。無資格者による検査が疑われる内容が現場から本社に報告されていたにもかかわらず、対応を現場任せにしていたと指摘した。同省は最大で1億9650万円と過去最高になる可能性がある過料の適用を静岡地裁に求めた。
勧告では、完成検査の現場業務の管理について再点検することや組織風土の改善を盛り込んだ。再発防止策の実施状況の四半期ごとの報告も求める。国交省はスズキが4月12日に提出した外部調査報告書を精査し、対応を決めた。
同省が調査を指示した2018年9月以降も検査不正を続けるなどして、特に悪質性が高いと認定した655台を巡っては道路運送車両法に基づいて過料を適用するよう静岡地裁に通知した。過料の対象となる台数としては過去最大となる。
国交省による報告書の精査では、日産自動車とSUBARU(スバル)で検査不正が明らかになった際、スズキでは、完成検査のチェックシートに不在の検査員の押印があったと、工場から本社の製造本部長に報告されていたことが判明。改ざんの指示は確認できなかったが、経営陣への報告や現場への改善指示を怠っていたと指摘した。
スズキの鈴木俊宏社長は7日、記者団に本社が不正の可能性を把握していたかどうか問われ、「理解が違っている」と述べた。そのうえで、「製造本部長まで報告があがっていたかどうか、私は把握していない」と話し、自身を含む経営陣は不正の隠蔽などには関わっていないことを改めて強調した。
石井啓一国交相はスズキの鈴木社長を国交省に呼び、勧告書を手渡した。「長年にわたり、完成検査における様々な不適切事案が放置され蔓延(まんえん)し、燃費不正問題の際も改善されることなく、他社の問題発覚の際にも、自社の事案を把握できなかった」と指摘。「不健全な組織風土など、容易には改善できない根深い問題だ」とも話した。鈴木社長は「(勧告を)重く厳粛に受け止め、全社一丸となり再発防止に取り組む」と応じた。