「米中貿易、双方に利益」中国商務省が報告書
過熱論争を懸念か
【北京=原田逸策】中国商務省は6日、米中貿易の報告書を公表した。「米中貿易は双方に利益がある」とし、両国経済の相互補完関係を強調した。中国が2日に貿易協議に関する「白書」を公表して以降、米中間では協議決裂の責任をなすりつける論争が過熱気味だ。中国は米国との対立が行きすぎないよう制御するため、報告書を公表した可能性がある。
報告書は米中貿易が米国が主張するほど不公平ではない、と繰り返した。商務省の高峰報道官は6日の記者会見で「米中の経済や貿易面での協力の本当の姿を理解するのに役立つ」と語った。
まず、米国が主張する対中赤字額は統計の問題などで実際より水増しされていると指摘した。米国の対中赤字は、産業競争力や経済構造の違い、国際分業――などが自然に生み出したとも主張した。米中貿易は米国の雇用創出、物価安定などにも役立っているとも指摘。米国企業の中国での売上高は2017年に約7千億ドル(約75兆円)にのぼったことも紹介した。
実はこれらの内容は昨年9月に公表した米中貿易の「白書」にすべて盛り込まれている。引用した数値やシンクタンクの研究報告書まで同じだ。あわてて作成して公表した感が否めない。
背景には最近の米中間の論争がありそうだ。
中国が2日、昨年に続く2度目の「白書」を公表して「米中協議決裂の責任は完全に米国にある」と主張すると、米通商代表部(USTR)と米財務省はただちに連名で「白書には失望した。中国が合意内容を覆した」と強く反論した。中国商務省も4日に「『中国が主張を後退』との責任追及は全くあたらない」と再反論するなど論争が熱を帯びていた。
福岡市で8、9日に開く20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、ムニューシン米財務長官と中国人民銀行の易綱総裁の会談が予定される。中国は双方の感情的な対立が行きすぎて、協議再開の糸口が見つからなくなる事態を恐れ、今回の報告書を公表した可能性がある。
報告書は「米中は共に発展し、互恵的でウィンウィンの協力相手になれる」と非常に前向きな言葉で締めくくった。