三菱重工、ボンバルと買収交渉 小型旅客機の保守事業
三菱重工業がカナダ・ボンバルディアの小型ジェット旅客機「CRJ」事業を買収する交渉に入った。機体メンテナンスなどサービス部門を中心に譲り受けたい考え。CRJの顧客ネットワークなどを手に入れることで、三菱航空機(愛知県豊山町)を通じて開発を進める「三菱リージョナルジェット(MRJ)」の事業基盤を強化する。
5日、三菱重工は「ボンバルディアと交渉を進めているのは事実だが、現時点で決定した事実はない」とコメントした。買収額は不明だが数百億円規模になるとみられる。ボンバルディアも交渉を認める一方「最終的に合意に至る保証はない」とコメントした。
ボンバルディアはブラジル・エンブラエルと、世界の小型旅客機市場を二分する。主力機種「CRJ」は客席数が50~100席で、世界で約1300機が運航している。リージョナルジェットと呼ばれる100席以下の航空機市場でのシェアは3~4割で、日本の航空会社も運航している。
2008年に開発に着手したMRJは納入の遅延が続き、事業化で苦戦している。一方、CRJ事業は米国などに整備拠点を持ち、豊富なスタッフも擁する。三菱重工はMRJを軌道に乗せるためにも、こうした人材を取り込む意向とみられる。
併せて米国などでCRJの既存顧客と接点を持つことでMRJの販路開拓を進めやすくなるとみている。CRJの機体の開発・製造は収益性が低いとみられ、三菱重工が引き受けるかどうかは不透明だ。
ボンバルディアは100~150席の中型機「Cシリーズ」の苦戦などで経営不振に陥り、18年、同事業を欧州エアバスに事実上、売却した。もう一つの柱だったプロペラ旅客機事業も売却。成長分野である鉄道事業などに経営資源を集中する方針だ。
三菱重工はMRJの開発に6千億円超の開発費用を投じているが、開発は大幅に遅延。すでに5回の納入延期を繰り返している。
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