米小売りで「最高サプライチェーン責任者」新設相次ぐ
米百貨店大手メーシーズや米ドラッグストア大手ウォルグリーンズ・ブーツ・アライアンスはこのほど、それぞれ4月からCSCOを初めて採用すると発表した。
メーシーズはこの役職を置くことで、調達から在庫管理、配送や持続可能性に至る商品に関わるあらゆるプロセスで効率化が進むと期待している。ウォルグリーンズはCSCOの採用により、力を入れているデジタル革新をさらに強化したいと考えている。
こうした取り組みを進めているのは両社だけではない。消費市場の各社は自社のサプライチェーンにますます注目するようになっている。
CBインサイツのプラットフォームを使ってこの傾向を可視化したのが下のグラフだ。
ここではCBインサイツの「決算発表記録」ツールを使い、2008年以降の決算発表で「サプライチェーン」という言葉が使われた回数を追跡した。その結果、言及回数は増えつつあることが明らかになった。消費財メーカーや小売り各社による発言がかなりの部分を占めた。一部を上のグラフで取り上げている。
サプライチェーンを改革するには
サプライチェーン改革はついに重要課題として認識されるようになった。では、小売りや消費財メーカー各社(CSCOを新たに任命した企業も含む)はどんな手を打つべきか。
(1)可視化に投資:世界に商品を配送する小売りや消費財メーカーにとって、従来の国際物流は不透明だった。米Flexport(フレックスポート)などのスタートアップ企業は世界の輸送状況を追跡・監視できるソフトウエアの開発を主導している。独DHLなど既存の物流企業も競争力を維持するために追随している。
(2)コネクティビティー(接続性)に投資:多くのサプライチェーンで可視化が進んでいないのは、コネクティビティーがないからだ。まだ初期の段階だが、ブロックチェーン(分散型台帳技術)は世界のサプライチェーンに有用な技術を提供してくれる。
ビール世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)や米IBM、中国のアリババ集団など大手小売りや消費財メーカー、テクノロジー各社は、グローバルなサプライチェーンの構成企業と協力し、効率や安全性、透明性の向上に取り組んでいる。
(3)自動化に投資:CBインサイツでは倉庫の自動化の一つの形態である「マイクロフルフィルメント」について取り上げたことがあるが、米ウォルマート、中国ネット通販大手の京東集団(JDドットコム)、米食品スーパー大手クローガーをはじめとする多くの小売りが倉庫の自動化に資金を投じている。さらに、ラストワンマイルの配送を手掛ける米Nuro(ニューロ)や、自動運転トラックの米Ike(アイク)などスタートアップ各社も自動運転を使った物流技術の開発に取り組んでいる。
拡大しつつあるサプライチェーン分野のスタートアップのエコシステム(生態系)は下の図の通りだ。
小売りや消費財メーカー各社は競争力を維持するために、自社のサプライチェーンに常に最先端の技術を導入しなくてはならない。