「GAFA独占」米も警戒 議会・司法当局が調査へ
【ワシントン=鳳山太成、シリコンバレー=中西豊紀】グーグルやフェイスブックなど「GAFA」と呼ばれる米IT(情報技術)大手に対し、米議会は3日、反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)違反がないか調査を始めると発表した。司法省なども調査を検討する。GAFAによるデータ寡占を警戒する動きが欧州から飛び火した形で、米IT競争政策が放任から規制に向かう転換点となる可能性がある。
「デジタル市場における市場支配力には新たな危険性がある」。米下院司法委員会で反トラスト法を管轄する小委員会のシシリン委員長は3日、ネット大手の巨大化に強い危機感を示した。競争を妨げる行為がないか、公聴会や召喚状など議会の権利を駆使して徹底的に調べるとも表明した。
米メディアは3日までに、反トラスト法を共同で所管する司法省と米連邦取引委員会(FTC)も調査を検討中だと報じた。司法省がグーグルとアップル、FTCがフェイスブックとアマゾン・ドット・コムをそれぞれ担当することで合意したという。
GAFA包囲網では欧州が先行していた。欧州連合(EU)の欧州委員会はグーグルのネット広告事業が優越的な立場を使い競合企業を妨害したのは競争法(独禁法)違反などとして、複数回にわたって制裁金の支払いを命じた。
米国でGAFAへの監視が緩かったのは法的な側面もある。EUの競争法が「競争の排除」を問題視するのに対し、米国の反トラスト法は「消費者にとって不利益か。特に値上げをしているか」を違反の判断基準としている。
グーグルやフェイスブックはユーザーにサービスを原則無料で提供し、アマゾンも既存の小売業と値下げ競争を繰り広げている。現行の法的な枠組みではこうしたIT大手を「独占」として問題視するのは難しかった。
このため下院司法委員会は今回の調査で、反トラスト法の改正も視野に入れる。特に問題になりそうなのが、各社が豊富な資金力を生かし、将来競合しそうな有望なスタートアップの買収を繰り返していることだ。ニューヨーク大学のスコット・ギャラウェー教授は「GAFAがライバルの買収でイノベーションの芽を摘んでいるならば、消費者にとってマイナスだ」と規模がもたらす弊害を指摘する。
アマゾンを反トラスト法違反とする論文で注目を集め、議会の助言役を務めるリナ・カーン氏も「1970年代の法解釈を引きずる反トラスト法は見直しが必要」と主張していた。
ここにきてGAFAへの風当たりが強まる背景にはフェイスブックによる個人情報の大量流出などが発覚し、消費者が得られる利益だけではなく、プライバシー侵害など負の側面にも目を向け始めたこともある。
有権者の動向を敏感に感じ取るワシントンの空気は変わりつつある。議会が3日発表した声明には下院を主導する民主党だけではなく、共和党の議員も名前を連ねた。民主党の次期大統領選候補、ウォーレン上院議員らはGAFA解体論まで主張する。
IT企業では過去にマイクロソフトがブラウザーで他社を締め出したとして、98年に米司法省などが反トラスト法違反で提訴した。マイクロソフトは分割こそ免れたが、訴訟対応でビジネスモデルを制限されて競争力を失い、検索などでグーグルにシェアを奪われた。
これまでイノベーションの担い手として放任されてきたGAFAだが、行政や議会による監視が強まれば、各社のビジネスモデルも抜本見直しを迫られる可能性がある。