ハルカスに続け、近鉄が上本町再開発 ホテルや百貨店
近鉄グループホールディングス(GHD)は主力の大阪上本町駅と周辺の一体再開発に乗り出す。老朽化が目立つ駅やホテルなどの建て替えや大型改修を検討し、2033年度までの完成を目指す。ターミナルではバスなど複数の交通の乗り換えをしやすくし、統合型リゾート(IR)を誘致する夢洲から来た訪日外国人を伊勢志摩など沿線に送るハブにする。
大阪上本町駅周辺の大型開発は10年開業の新歌舞伎座が入る「上本町YUFURA(ユフラ)」以来。これまで力を入れていた「あべのハルカス」を中心とする阿倍野地域の開発が一服。近鉄創業の地で商業施設が集まる上本町を再開発し、地理的に近い阿倍野と街づくりで相乗効果を探る。
大阪上本町駅の年間乗降客数は約2800万人と近鉄の大阪府の駅では4番目。大阪中心部から奈良や京都、伊勢志摩などの沿線に向かう玄関にあたるが、ターミナルは築30~50年程度と古い。
シェラトン都ホテル大阪は1985年に前身が開業。2007年に今の形に大型改装してから10年以上たつ。約600室あり、現在は訪日客を中心に年間で約30万人が宿泊する。夢洲にIRが開業すれば、今後は展示会など「MICE」目的の訪日客が増えるとみており、要人を招いた国際会議や宿泊に対応する高級ホテルに転換。周辺にはスタートアップ向けオフィスも開く考えだ。
近鉄百貨店上本町店も改修などを検討する。あべのハルカス近鉄本店が訪日客が多く、年間売上高1000億円を超える大型店に対し、上本町店は地元客が多い売上高240億円強の中型店。開業80周年だった16年から継続的に改装をしてきたが、老朽化が進む。今後は訪日客に対応した店舗作りも重視する。
交通機能も改善する。現在はターミナルは鉄道駅や、空港を結ぶバスの発着が中心であり、今後はタクシーや駐車場と一体的に整備する。
近鉄は33年度のあるべき姿を示した長期経営目標で国際博覧会(大阪・関西万博)・IRの関連事業、伊勢志摩地域の活性化を掲げた。万博・IR会場の夢洲と伊勢志摩の中間地点となる上本町駅の再開発は沿線広域での訪日客需要の取り込み拡大につながるとみる。23年度までに3事業を中心に800億円を投じる。
競う私鉄 地域に多様性
鉄道会社による再開発は大阪に多様性を生んでいる。これまで観光やビジネスの拠点は梅田と難波が中心だったが、阿倍野や新今宮などに広がる。銀座や新宿、渋谷などを抱える東京に比べて大阪は拠点となる地域が少なかった。地域間競争の激化は関西全体の魅力向上につながりそうだ。
南海電気鉄道は昨秋、難波に大型複合ビル「なんばスカイオ」を開業した。ミナミは観光や飲食の色合いが濃い。大規模なオフィスビルの開設でビジネスに強いキタに対抗する。近鉄グループホールディングスは阿倍野に近い上本町を観光拠点として磨き、阿倍野・天王寺地域を活性化する。
地域間競争は今後、東西軸でも起きうる。京阪ホールディングスは中之島線を延伸する構想だ。夢洲と京都を結び、ホテル建設を進める京都に訪日客を呼び込む。
関西では阪急電鉄などを除いて多くの鉄道沿線の人口が減少傾向にある。生き残るには地域間競争に勝たなければならず、継続的な投資と魅力作りが欠かせない。
(中西誠、増野光俊)