中国政府、国有大手3社に5G免許交付へ 米に対抗
【北京=多部田俊輔】中国政府は近く国有通信大手3社に次世代通信規格「5G」の免許を交付する。トランプ米政権が5Gの技術を多く持つ中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の排除を進めていることに対抗し、中国政府は5G免許の交付で総額で20兆円規模とされる5G投資を加速させ、ファーウェイなど中国企業を支援する構えだ。
中国国営の新華社が3日、中国政府で情報通信行政を担う工業情報化省が近く5Gの免許を交付すると報じた。同省関係者は、早ければ6月中にも中国移動通信集団、中国電信集団、中国聯合網絡通信集団の国有通信大手3社に与えるとしている。
業界関係者によると、通信大手3社合計で15億件以上の携帯電話の契約件数を抱える中国の5G投資は総額で20兆円に達する見通し。日本ではNTTドコモとKDDIがそれぞれ5年で1兆円程度の投資を見込むのに比べて投資規模は桁違いに大きい。
中国政府はもともと2019年に試験的な商用サービス、20年に本格的な商用サービスを始める計画だった。中国移動(チャイナモバイル)など国有3社の上場子会社3社が3月に明らかにした19年の5G投資の合計は5千億円にとどまっていた。
3日の新華社の報道によれば、工業情報化省は「19年を5Gの商用元年」と位置づけた。業界関係者は「5G投資が前倒しになる可能性が出てきた」と指摘する。中国移動が1月に実施した5G基地局の入札でも半分はファーウェイが占めており、ファーウェイの収益押し上げを狙っている可能性もある。
ファーウェイや小米(シャオミ)などスマートフォン(スマホ)中国大手は5G対応製品の国内投入の準備を進めている。5G免許交付にあわせて新製品を投入すれば、勢いを欠く国内消費を押し上げる効果が期待できる。
トランプ米政権の圧力にもかかわらず、工業情報化省は5Gの研究開発でフィンランドのノキア、スウェーデンのエリクソン、米国のクアルコム、インテルなど外国企業と深い協力によって5Gの商用インフラが整ったと強調する。外国企業の中国市場参入を歓迎すると対外開放もアピールした。
米中貿易摩擦がハイテク覇権争いに発展し、ハイテク産業の供給網(サプライチェーン)が米中で分断される懸念が浮上している。中国の巨大な5Gの商機にどう向き合うのか。米国半導体大手を含む外国企業は難しい経営判断を迫られそうだ。