聖火リレー、被災地照らす ルート概要公表
857市区町村を走破、世界遺産にも光
2020年東京五輪で全国47都道府県を巡る聖火リレーについて、大会組織委員会は1日、ルートの概要を公表した。東日本大震災の津波に耐えた「奇跡の一本松」(岩手県陸前高田市)や16年の熊本地震で甚大な被害を受けた熊本城(熊本市)などを組み込み、「復興五輪」の理念を国内外にアピール。世界遺産などもつなぎ、121日間かけ857市区町村をまわる。
リレーは20年3月26日、東京電力福島第1原子力発電所事故の直後に収束作業の拠点となった福島県のサッカー施設「Jヴィレッジ」(楢葉町、広野町)でスタートする。ランナーは公募などで約1万人が選ばれる見込みで、約200メートルずつ走って全国を結ぶ。7月24日、新国立競技場(東京・新宿)での開会式で聖火台に点火される。
東京五輪は被災から着実に復興する姿を世界に示す「復興五輪」が理念の一つだ。東日本大震災の被災地からは、記憶を伝えるためがれきで造成した「千年希望の丘」(宮城県岩沼市)や原発立地自治体で避難指示が初めて解除された福島県大熊町などがルートに入った。18年の北海道地震で大きな被害を受けた厚真町も通る。
日本の魅力を伝えるため、日光東照宮(栃木県日光市)や富岡製糸場(群馬県富岡市)、原爆ドームがある平和記念公園(広島市)、首里城(那覇市)などの世界遺産が選ばれた。日本三景の一つである天橋立(京都府宮津市)や鳥取砂丘(鳥取市)、伊勢神宮(三重県伊勢市)などの景勝地・名所も見どころだ。
文化発信もテーマに掲げており、例えば20年4月開館のアイヌ民族文化の発信施設「民族共生象徴空間」(北海道白老町)を通る。徳島県は「阿波おどりで聖火を歓迎する仕組みを考えている」(県スポーツ振興課)。
ルート概要は各都道府県で作成し、大会組織委員会がとりまとめた。リレーは全国の市区町村の約半数を通過することになる。組織委の幹部は「復興の歩みが進むよう被災地からも多くの場所が選ばれた。各地の魅力ある場所も訪れるので多くの人に観覧してもらいたい」と話す。
通過する道路など詳細なルートや全体の走行距離は今後、各都道府県と組織委で詰めて年末ごろに発表する予定だ。聖火ランナーは08年4月1日以前に生まれた人が対象で、公募は6月17日以降に順次始まり、12月以降に決定が通知される。
36年大会での走行距離は約3千キロ。2012年ロンドン大会では約8千人が70日間で約1万2800キロを走った。16年リオデジャネイロ大会は95日間で約1万2千人が参加し、距離は約2万キロに及んだ。