インド成長、7%割れ 18年度、農業や製造業低迷
第2次モディ政権、経済底上げ急務
【ニューデリー=馬場燃】インド統計局が31日発表した2018年度の実質成長率は17年度に比べ6.8%にとどまった。世界経済が減速するなかでインドも農業や製造業が振るわず、5年ぶりに7%を下回った。第2次モディ政権は同日に主要閣僚を決めて新しく船出したが、インフラ投資の拡大など経済の底上げが急務になりそうだ。
成長率は16年度の8.2%を直近のピークに2年連続で低下した。4半期ごとの成長率を産業別にみると、19年1~3月期は農業がマイナスに転じた。製造業や建設業も18年7月以降から落ち込みが目立っている。18年夏から口火が切られた米中貿易摩擦の影響を受けている可能性がある。
20万を超える地場企業で構成するインド商工・産業協会は成長の鈍化について「貿易摩擦の高まりが先行きを不透明にしている。足元の消費と設備投資もさえない」との見方を示す。同協会は19年度、20年度の成長率はいずれも7%程度にとどまり、ほぼ横ばいで推移するとみている。
第1次モディ政権では5年間の成長率が平均7.5%だった。しかし市民からは「政権公約で約束した雇用創出などの経済政策は進まなかった」との不満もあり、第2次政権では経済成長の加速が欠かせない。そのけん引役になるのが財務相であり、第1次モディ政権で商工相や国防相を歴任した政策通のシタラマン氏をすえた。
モディ首相はこれから約160兆円のインフラ投資を進め、道路、空港、地下鉄などの整備を進めると約束した。政権公約では農家の収入を2倍に引き上げることも柱に掲げる。中小企業やスタートアップの育成もうたうが、問題は財源確保の具体策がみえない点だ。シタラマン財務相は成長と財源の双方に目配りしないといけない。
新たな閣僚ではシン国防相やジャイシャンカール外相も注目される。第2次モディ政権は軍事的緊張が高まるパキスタンを意識し、国防の強化を明言する。インドにとっては米中貿易摩擦が激しくなる中、どのように周辺国と外交や連携を図るかも重要になる。金融市場では各国との枠組み次第では、米中が争う裏で成長の果実を得られるとの見方もある。
モディ首相は30日の就任式にスリランカなど周辺国の首脳を招待した一方で、パキスタンだけを除外した。パキスタンをけん制する姿勢を示した形だが、両国間のナショナリズムを刺激する危険もはらんでいる。第2次モディ政権は多くの課題を抱えている。