親から子への「懲戒権」見直しへ 法相、法制審に諮問 児童虐待防ぐ
山下貴司法相は31日の閣議後の記者会見で、子の教育や監護に必要な範囲で親に認めている民法の「懲戒権」の見直しを法制審議会(法相の諮問機関)に諮問する方針を示した。児童虐待問題が相次ぐなか、懲戒権が親から子への虐待を正当化する口実として悪用されているとの指摘がある。法制審では懲戒権の削除や表現の変更なども含め議論する。
6月20日に開く法制審の臨時総会で諮問する。2011年の民法改正でも懲戒権の存廃の是非は議論となった。削除は見送ったものの「子の利益のため」になる場合に認められると明記していた。それでもなお、懲戒権が「しつけ」を口実とした虐待につながっているとの見方は根強い。
今国会では親による体罰禁止を盛った児童虐待防止法と児童福祉法の改正案を審議中だ。改正案では施行後2年をめどに懲戒権のあり方を検討するとしており、法務省は対応を急ぐ。政府・与党には参院選を前に対応を急ぐ姿勢を示す狙いもありそうだ。
法制審には無戸籍者をなくすための民法の「嫡出推定」の見直しも諮問する。離婚後300日以内に生まれた子は元の夫の子と認定するものだ。この規定の存廃の是非などを議論する。
母親が元夫の子と扱われるのを避けるため出生届を提出しないことがある。4月時点で無戸籍者は827人おり、うち約8割がこうした理由によるものという。無戸籍となると、一定の条件を満たさないと婚姻できなかったり、旅券を取得できなかったりする。