「がんで仕事辞める」3割超 国立がんセンター調査
国立がん研究センターは30日、「がんにかかったら仕事を辞めなくてはいけない」と考えている会社員の割合が、大企業で31.8%、中小企業で35.6%だったとする調査結果を発表した。同センターはがんに対する企業の理解と協力が不可欠として、先進事例をまとめたガイドブックを作成し対応を促している。
同センターは昨年11~12月に調査を行った。大企業の社員624人のうち、がんを発症したら仕事を辞めなくてはいけないと考えているかとの質問に、「非常にそう思う」が4.2%、「まあまあそう思う」が27.6%だった。中小企業の社員419人への調査では、「非常にそう思う」が5.3%、「まあまあそう思う」が30.3%で、企業規模によって大きな違いはなかった。
一方、がんになった時の相談先を尋ねる質問は、「会社には相談しない」とした人が大企業で11.8%だったのに対し、中小企業では25.3%と10ポイント以上の差が出た。大企業に比べて中小企業の相談体制が整っていない可能性がある。
「がんに関する社内の相談窓口が広く知られているか」という質問に対し、大企業、中小企業の社員はいずれも約9割が否定した。同センターがんサバイバーシップ支援部の高橋都部長は「相談体制の整備だけでなく、広く周知して気軽に利用してもらうための工夫が欠かせない」と指摘する。
現在では内視鏡手術の普及や、抗がん剤の副作用の抑制が進んでいることで、短期の入院や通院で治療できるケースも増えている。高橋部長は「企業側ががん治療の現状を把握し、治療に利用できる既存の休暇制度を整理するだけで、離職を防げることは多い」と話す。
同センターは、がんと仕事の両立に関するガイドブックを30日に公表した。短時間の通院には時間単位の有給休暇などで対応し、体力の低下で通勤ラッシュの負担が重い場合は時差出勤などを勧めるといった対応例をまとめた。
先進企業の取り組みとして、利用できる休暇制度や治療中の給与の支払いなどを説明するハンドブックを作成した大手製薬会社や、経営トップの直下に健康管理などを担う専門部署を設置した建設業の中小企業などを紹介している。