イスラエル、再び総選挙へ 連立協議不調で
【テルアビブ=飛田雅則】イスラエルで右派リクードのネタニヤフ首相による連立協議が不成立となったことを受け、同国の国会(定数120)は30日、解散を決めた。9月17日に再選挙を実施する予定だ。徴兵制度をめぐり極右政党と溝が埋まらず、期限の29日夜までに過半数の支持を得られずに組閣を断念した。4月の総選挙から2カ月足らずで再選挙が決まった。同国内政の不協和音は中東情勢全体に影響を与えそうだ。
ネタニヤフ氏による連立協議が不調となり、同氏以外の政党代表も過半数を得て連立政権を成立させられることは容易ではないことから、国会は解散に踏み切った。29日夜から実施された投票で74人の議員が解散に賛成した。
4月9日の総選挙ではネタニヤフ氏が率いるリクードは35議席を得て、中道野党連合「青と白」の35議席と並んだ。右派系の政党で過半数の65議席となり、リブリン大統領がネタニヤフ氏に組閣を要請していた。
ネタニヤフ氏は5期目の政権発足に向けて、極右や宗教政党と連立協議を進めてきた。しかし、リーベルマン前国防相が党首の極右「わが家イスラエル」が連立入りの条件として、超正統派のユダヤ人の徴兵免除を撤廃する法案の成立を主張し、反対する宗教政党と対立していた。
期限ぎりぎりまで協議を続けたが、わが家イスラエルは譲らず、交渉は暗礁に乗り上げた。5議席を持つ同党の参加は、過半数の達成に必須となっていた。解散が決まった5月30日、ネタニヤフ氏は記者団に「リーベルマン氏は合意をする意思がなかった」と批判した。
現地のジャーナリスト、タル・シュナイダー氏は「連立交渉が失敗したネタニヤフ氏にとって、議席を伸ばせる可能性がある再選挙は次善の策」とみる。だが、再選挙の実施で、米国のトランプ政権が近く公表する見込みの中東和平案の先行きにも影響を与える可能性がある。
超正統派は教義を厳格に守って生活するユダヤ教の最右派で、人口の10%ほどを占める。同国では18歳以上のほとんどの男女に兵役義務があるが、超正統派は原則として兵役を免除されてきた。平等な兵役の実施を求める極右など世俗政党と対立してきた。