NY株、3カ月半ぶり安値 景気減速への警戒強まる
【ニューヨーク=宮本岳則】29日の米国株式市場では、ダウ工業株30種平均が続落し、前日比221ドル36セント(0.87%)安の2万5126ドル41セントで終えた。2月11日以来、約3カ月半ぶりの安値水準となった。米国と中国の対立が長引き、世界景気に悪影響が及ぶとの見方から、投資家は株式や原油先物などリスク資産に資金を振り向けにくくなった。一方、安全資産とされる米国債には買いが集まり、米長期金利は2017年9月以来の水準まで下がった。
米国株市場はアジア株や欧州株が下落した流れを引き継ぎ、売り優勢で始まった。ダウ平均は午後にかけて下げ幅を徐々に広げる展開となり、一時、400ドル安まで売られる場面があった。米証券会社ロバートWベアードの株式トレーダー、マイケル・アントネッリ氏は「マクロ環境が悪化し、下値で買おうとする投資家がいなくなった」と指摘する。買い手不在の中、短期筋の売りに押されやすくなった。
米中対立の長期化は投資家に経済見通しの修正を迫っている。ここにきて中国がレアアース(希土類)の対米輸出規制に動くとの見方が広まるなど、投資家心理の悪化につながる材料が続いている。大阪で6月に開催される20カ国・地域(G20)首脳会議で米中が包括的な合意に達するとの期待も後退した。追加関税による景気減速を織り込まざるを得なくなり、株式から米国債など安全資産に資金を移す動きが活発になった。
米ジョーンズトレーディングの上場投資信託(ETF)取引責任者、デイブ・ルッツ氏は29日の米株相場について「金利低下と原油下落が株安を加速させている」と指摘する。米長期金利の低下(米国債価格は上昇)が止まらず、利ざや悪化懸念から米大手銀行株売りを招いた。原油についても景気減速で需要が減るとの見方から、先物価格の下落が続き、エネルギー株にも売りが波及している。