ADB総裁、中国融資「金利上げを協議」
温暖化・環境分野に重点
【北京=原田逸策】アジア開発銀行(ADB)の中尾武彦総裁は28日、訪問先の北京市内で記者会見した。中国の国民所得の向上を受け、中国向け貸し出しの金利を引き上げる協議を中国政府と始めたことを明らかにした。中尾氏は「今後の中国向けの貸し出しは量よりも質に重点を置き、気候変動対策や環境などの分野の融資に力を入れる」と語った。
中尾氏は26~28日の日程で中国を訪れた。期間中は劉昆財政相、李幹傑生態環境相、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の金立群総裁らと会談した。
中尾氏によると、1人当たりの国民所得が年4千ドル(約44万円、2017年基準)を上回る国は金利の引き上げを検討する。中国の所得は8700ドルでこの基準を大幅に上回る。世界銀行は昨年、中国向けの金利上げを決めた。
中尾氏は劉財政相との会談で金利上げの協議を始めたと明らかにした上で「中国も真剣に誠意を持って検討してくれると思う」と語った。「引き上げ幅は大きくはならない」との見方も示した。
ADBは中国向けの融資の規模を徐々に縮小し、融資全体に占める比率は13年の14%から18年は11%に下がった。中尾氏は「日本政府もすぐにADBの融資から中国を『卒業』させることは求めていない」と述べ、時間をかけて縮小していく方針を示唆した。
中国は米国との貿易戦争が激しくなり、経済の先行きに不透明感がある。中尾氏は「自動車を除けば個人消費は力強い。減税などの措置も打っている。アジア全体も安定している」と語った。一方で「さらに貿易摩擦が激化すれば、消費者心理などが悪化する恐れがある」と警戒感を示した。
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