香港、長老経営者が相次ぎ引退 恒基兆業や東亜銀行 共同トップ体制に
【香港=木原雄士】香港経済を支えてきた長老経営者が相次ぎ表舞台を去る。不動産大手、恒基兆業地産(ヘンダーソンランド)の創業者、李兆基氏(91)が28日に退任し、東亜銀行のトップを38年間務めてきた李国宝(デビッド・リー)行政総裁(80)も7月に退く。ビジネス環境が大きく変わる中、家族経営の転機となる可能性もある。
李兆基氏は恒基兆業が28日に開いた株主総会で会長を退き息子の李家傑氏(56)と李家誠氏(48)が共同会長に就いた。声明で「孫と遊んだり慈善事業を続けたりするのに多くの時間を使う。2人の息子は性格が違うが、チームとしてうまくやっていける」と述べた。
李兆基氏は不動産やガス、フェリーなどの複数の事業を手掛けるグループを築き上げた。個人資産は300億ドル(約3兆3千億円)に上り「香港ドリーム」の体現者だ。
東亜銀の李国宝氏は創業家3代目。東亜銀を香港資本としては最大手に育て上げた。米ヘッジファンドが退任を迫ったこともあったが、同族経営を貫いた。共同トップには副行政総裁を務める息子の李民橋氏(45)と李民斌氏(44)が就く。兄が香港、弟が中国本土や海外事業を担当する。
恒基兆業や東亜銀を取り巻く環境は複雑だ。香港は中国本土への経済的な依存度が高まり、不動産価格が上がり続けるか不透明だ。伝統的な店舗網を強みとする東亜銀はインターネット専業銀行などの挑戦を受ける。2社とも2人の息子が担当分野を分けて巨大なグループのかじ取りを担う。これまで以上に機敏な経営判断が求められそうだ。
香港では戦後の経済成長をけん引した経営者の引退が続いている。18年には「マカオのカジノ王」と呼ばれた何鴻●(桑の又が火)(スタンレー・ホー)氏(97)がカジノ運営大手、澳門博彩控股(SJMホールディングス)会長を退任したほか、長江和記実業(CKハチソンホールディングス)の李嘉誠氏(90)も現役を退いた。