東商取、19年3月期の最終赤字23億円 取引減や減損で過去最大
東京商品取引所が24日発表した2019年3月期の連結決算は、最終損益が23億円の赤字(前の期は7億円の赤字)だった。最終赤字は4期連続。取引低迷に加え日本取引所グループ(JPX)との統合に向けた減損処理で、発足以来最大の赤字幅になった。新たに上場を見込む電力先物は利用が拡大するか見通しにくい。経営立て直しの道筋は描けていない。
売上高に相当する営業収益は29億8300万円と前の期に比べ4%減った。収入を左右する売買高は2107万枚(枚は最小売買単位)と前の期を17%下回った。
個人投資家を呼び込むために設計した、プラチナ(白金)など貴金属の限日取引が落ち込んだ。原油価格に天井感が広がり、上場投資証券(ETN)からの資金流入も細った。
昨年10月にはブロック状ゴム(TSR)を新たに上場したものの、投資家の認知度が高まらず取引の活性化につながらなかった。営業費用を補えず、経常赤字は7億9100万円と前の期(7億1800万円)から拡大した。
東商取は10月にJPXの子会社になり、20年にも証券と商品先物を一体で扱う総合取引所に移行する計画だ。統合に先立ち、売買高の低迷を踏まえ売買システムなどを減損処理し15億円の特別損失を計上した。
財務の健全性を示す自己資本比率は4.7%と、前期に比べ0.6ポイント低下。8.6%あった5年前(14年3月期)の半分近い水準に落ちた。
東商取の取締役は、浜田隆道社長以外は商品取引会社の首脳ら社外の出身者で占める。取引所を利用する商取会社にとり、先物取引の落ち込みは手数料収入の減少に直結する。商取業界では、浜田社長の経営手腕に不満が募っていた。
24日の取締役会では、売買の低迷や業績の悪化に対し商取会社出身の社外取締役から浜田社長の経営責任を厳しく指摘する声も上がった。浜田社長は同日の会見で「巨額の赤字に対し責任を痛感している。総合取引所を仕上げていくことで責任とさせていただきたい」と述べるにとどめた。6月の定時株主総会でも、株主から批判が出る可能性がある。
20年3月期も収益改善へのハードルは高い。原油先物との相乗効果が期待できる電力先物の取引開始が見込めるものの、取引期限を区切った試験上場でスタートする。
有力な供給者である大手電力はこれまで参加に消極的で、売買高がどこまで伸びるか未知数だ。浜田社長は24日、日本経済新聞の取材に応じ、「電力会社が懸念していた清算や信用力の部分はJPXとの統合で解決される」と話した。
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