東北の地銀 有価証券含み益11%減 3行が含み損
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東北の地方銀行が有価証券運用で苦境に立っている。2019年3月期決算はホールディングスの傘下行を含めた15行全体で有価証券の含み益が11%減少した。きらやか銀行、みちのく銀行、福島銀行の3行は含み損となった。超低金利で融資の利ざやで稼げなくなった地銀は保有する株や債券の売却などの「益出し」で利益を確保してきたが、一部の地銀では益出し余力が低下している。
国内の株価下落で評価損が膨らんでいるほか、外国債券の運用リスクも浮き彫りになってきた。みちのく銀は21億円の含み損を出した。前の期は16億円の含み益だった。最近の株価下落を受け、「保有する株や投資信託の評価額が下がった」とした。福島銀も4億円の含み益から一転して15億円の含み損となった。
東邦銀行は評価損を抱える債券の損切りに動いた。18年秋ごろから米長期金利の上昇(債券価格は下落)で、外債などの評価損が広がった。国債等債券損益で69億円の売却損を計上した。保有する株式も持ち合い解消のため一部を売却し、有価証券の保有残高は前の期に比べて大きく減った。
地銀は超低金利で利ざやが乏しくなっている。金利の低下は貸し出しだけでなく、有価証券運用にも影を落とす。大規模な金融緩和が続くなか、過去に仕込んだ比較的利回りの高い国債が償還を迎える。「今の環境で再投資先を見つけることは難しい」と運用資金の振り向け先に頭を抱える。
人口減や企業の資金需要の減少で経営環境は厳しさを増すばかりだ。収益力が細る一方、これまで収益を支えてきた有価証券の含み益の水準をみると、銀行ごとの体力差が鮮明になってきた。
益出し余力が弱まってきた銀行が有価証券運用で失敗したり、想定外の不良債権を抱えたりすれば最終赤字に転落する可能性が高まる。持続可能なビジネスモデルの構築が求められている。
仙台支局 古山和弘が担当しました。