勤労統計で再びミス、数値に誤りか 公表を突然延期
不正調査が問題となった毎月勤労統計で、再び不始末が生じている。厚生労働省は24日、同日朝に予定していた2019年3月と18年度の確報値の公表を突然、延期した。同省は1週間前に問題を認識していた。勤労統計は労働者の賃金や労働時間を把握するのが目的で、景気判断に用いられている。度重なるミスは政府見通しの信頼性にもかかわってくる。
「利用者に迷惑をおかけし、大変申し訳ありませんでした」。24日午前の総務省統計委員会で、厚労省の滝原章夫統計管理官は公表延期を謝罪した。19年の統計委員会は厚労省の謝罪が「恒例行事」となっている。委員らはあきれ顔だった。
今回の公表延期の理由について、厚労省は統計処理に使う雇用保険の加入人数などのデータを取り違えていた可能性があるという。問題なのは、同省が可能性に気づいたのが「5月16日」(滝原氏)であることだ。それにもかかわらず、確報値の公表予定時間である24日午前8時30分になって初めて延期を発表した。
一報を聞いた民間エコノミストの一人は「普通ではあり得ない」と憤った。同省は影響を「精査中」としながらも、18年7月の賃金が50円程度下振れするとの見方を明らかにした。7月以降も修正する可能性がある。19年3月と18年度の確報は月内に公表するという。
勤労統計は国が特に重要と指定する基幹統計の一つだ。月例経済報告や雇用保険の失業給付額の基準などに用いられる。
18年末に発覚した不正調査では、本来は従業員500人以上の事業所は全て調べる決まりになっていたのに、東京都では04年から3分の1程度しか調べていなかった。18年からは無断で統計上の復元加工を始めていた。
こうした結果、のべ2000万人の雇用保険などに過少給付が発生した。雇用保険は年度の平均賃金を使い、支給額が決まるため、今回のミスによる追加給付は発生しないという。
不正発覚後、勤労統計に疑念の声を上げる専門家は増えている。2月の毎月勤労統計(確報)によると、一般労働者とパート労働者の現金給与総額がともに前年同月に比べてプラスだったが、就業者全体でみるとマイナスだった。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「パートの比率が高く、サンプルにゆがみがあるのではないか」と指摘する。
不正調査の影響で04~11年の統計データが欠落し、この間の賃金の動向が正確に把握できない異例の状態が続く。公表日の突然の延期で、厚労省の統計へのさらなる信頼の低下は避けられない。