インド総選挙、与党圧勝へ モディ首相が勝利宣言
【ニューデリー=早川麗】23日に開票が始まったインド総選挙で、モディ首相が率いる与党インド人民党(BJP)の勝利が確実となった。隣国パキスタンへの強硬姿勢で「強い首相」をアピールしたモディ氏は有権者の支持を集め、BJPは単独過半数を確保する見通しだ。モディ氏は同日夜、「インドは一体となって私たちを選んでくれた」と述べ、選挙管理委員会の公式発表を待たずに勝利宣言した。
「今回の結果は『新しいインド』に向けた国民の負託だ」。午後7時50分ごろ、ニューデリーの党本部でモディ氏が支持者の前で演説すると、大きな歓声が沸き起こった。4月11日の投票開始から約1カ月半続いた選挙戦は、与党連合の圧勝で幕を閉じる見込みだ。
選管発表によると、午後8時30分時点で下院の定数545のうち、BJPが獲得した議席が88、BJP候補の「優勢」が214で、単独で過半数を上回る300議席超を確保する勢いだ。初代首相ネールのひ孫で、最大野党・国民会議派のラフル・ガンジー総裁は「国民はモディ氏を首相に選んだ」と敗北を認めた。
BJPが2期続けて政権を担うのは初めて。単一の政党が連続して過半数を獲得すれば1984年以来となる。
選挙戦は2期目を目指すモディ氏に、国民会議派などの野党連合が挑む構図だった。国民会議派も議席数を増やす勢いだが、与党には遠く及ばない。ニューデリーにあるネタジ・スバース工科大学のクマール准教授(社会学)は「モディ氏に対抗しうる強いリーダーが他にいなかった」と指摘する。
BJPは2014年の前回総選挙で、西部グジャラート州の首相として経済運営に手腕を発揮したモディ氏の人気を背景に圧勝した。今回は18年末の地方選でBJPが惨敗したこともあり、苦戦が予想されていた。
風向きを変えたのが2月にカシミール地方で起きたテロだ。パキスタンに本拠を置くテロ組織が犯行声明を出すと、モディ政権は越境し隣国内を空爆した。隣国に敵対感情を抱く国民は喝采し、モディ氏は演説台に「私は見回り兵」と標語を張り、支持を訴えた。経済政策では農民の所得倍増やインフラ整備に100兆ルピー(約160兆円)を投資する方針を強調し、票の取り込みを図った。
一方、野党側は雇用創出や農村所得の底上げなどを実現できなかったとモディ政権を批判した。国民会議派は公約で低所得世帯に年7万2千ルピーを給付するとし、一部地方政党と組んで農家や貧困層に訴えたが、支持は伸び悩んだ。
モディ氏は就任1期目で外資規制の緩和や、産業の新陳代謝を促す破産倒産法の整備、長年の懸案だった全国統一の間接税「物品・サービス税(GST)」の導入などを果たした。だが16年の高額2紙幣の廃止や、GSTの導入に伴う混乱が反発を招き、同氏の支持率は17年をピークに下落していた。
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安倍晋三首相は23日夜、インドのモディ首相と電話で協議し、総選挙の勝利に祝意を伝えた。「力強いリーダーシップによる実績が評価を得た」と評した。日印関係の強化や「自由で開かれたインド太平洋」を実現するため、緊密に協力したい考えを伝達した。モディ氏は謝意を述べ、6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議への出席に意欲を示した。