伊奈氏「取締役の忠実義務果たした」LIXIL株主側候補者ら一問一答
23日に記者会見を開いたLIXILグループの瀬戸欣哉取締役ら株主提案の取締役候補者の主なやりとりは以下の通り。
――鬼丸かおる氏(元最高裁判事)と鈴木輝夫氏(元あずさ監査法人副理事長)は会社側の取締役候補者案に入ったが、なぜ会社案に不同意なのですか。
鬼丸氏 「指名委員会にはインタビューを受けただけで、何も言われず、その後急に新聞で(会社案を)知った。今までの心構えと全く違うので、会社提案という形では受けない。株主提案として名前を挙げさせてほしい」
鈴木氏 「(会社案は)13日朝に、瀬戸さんを通じて聞いた。公表前に直接の連絡や説明もなく、同意を得ることもなくこういう形で候補を選んだのは問題。指名委から納得できる説明はなく、非常に強い不信感を抱かざるを得ず、同意できないということを明確に伝えた」
――(株主側提案の候補者は)8人全員でチームだというが、もし1人欠けた場合は、のこり7人も辞退するのですか。
西浦裕二氏(三井住友トラストクラブ元会長) 「今まで繰り返し、8人一括でと伝えてきた。定時株主総会まで1カ月あるのでどうなるかわからない。われわれとしては会社側候補とも事前に会って話したい。そういう中で想定外のことがあるかもしれないが、現状は変わりない。一括でという気持ちに一切変わりはない。(瀬戸氏など社内候補が欠けた場合は)自分の役割が果たせないという形になった場合は、明確に辞退したい」
――会社側が、株主側候補者の8人中、鬼丸氏、鈴木氏を除く6人について不適格と指摘したことへの反論は。
瀬戸欣哉氏 「一番腹が立ったのは、伊奈(啓一郎LIXILグループ取締役)氏と川本(隆一同取締役)氏のところ。会社が悪いことをしている状態で、黙っていることがいいこととは思えない」
伊奈氏 「(会社側は)守秘義務を無視して、取締役会を混乱させる情報を外部に漏らしたという。もちろん守秘義務があるのは理解しているが、もう一つ、忠実義務というのがある。株主であったり、会社そのものに忠実に業務を果たす。社内に不正や不適格なことがあったときに口をつぐんで黙っていることは、忠実義務に違反する。それを株主にお伝えして、会社の方針を是正するのが本来の役割。それが気に入らないから、というのは合理性がない」
――会社案では10人中9人が社外取締役。ガバナンスをただすにはどうすればいいですか。
鈴木氏 「8人で話し合いを進めている。海外を含めて多岐にわたる事業をやる場合、社内の協力なしに進めるのは不可能で、社内取締役にそれぞれ役割をもってもらう。指名委は現在(果たしている)役割は十分ではなく、見直してちゃんとした体制を作る。特に指名委員会で将来の最高経営責任者(CEO)を決めるのが一番重要な役割だと思っている。ガバナンス委員会も必要だ。報告書の形はよくできているが、実態が沿っているかどうか」
西浦氏 「パソコンに例えると、どんなに優秀なハードウエアがあってもソフトウエアに問題があれば動かない。形や制度などハードに関してはちゃんとしているが、ソフトにあたる運用側のルールやプロセスには問題があり、直ちに取り組みたい。意識や姿勢の問題も洗い出したい」
――執行体制をどうしますか。今は執行が分裂している状況とも見えますが、どう変えますか。
瀬戸氏 「執行が分裂ということはない。(取締役ではない幹部からなる執行機関の)ビジネスボードの14人中10人が、潮田(洋一郎会長兼CEO)氏、山梨(広一社長兼最高執行責任者、COO)氏の下でやるのは困難だと声明を出した。現体制が続けば人事的に不利になる状況で出しているので、残り4人が心がそろっていないわけではない。会社の中で瀬戸派、潮田派とか、トステム派、INAX派とかいうのはない。取締役会にはあるのかもしれないが、その下ではLIXILをよくしたいという気持ちを皆持っている」
川本氏 「多くのLIXILの経営幹部が瀬戸氏を、瀬戸氏の政策やリーダーシップを支持していると思う。グローバルのメンバーからも国内のメンバーからも、経営手腕に定評があり、戻ってもらいたいと思われている」
西浦氏 「よくここまで声明を出したと驚いた。彼らの気持ちは大切にしなければいけないし、彼らに今後、不利益が発生しない体制は整えなければいけないと思った。定時株主総会は政権選択の選挙の場だと考えている。そうだとすると首班であるCEOについては、明示すべきではないか。会社側も株主総会までの間にぜひ公表してほしい」
鈴木氏 「ビジネスボードの声明には今のガバナンスにこうなってほしい、CEOにもこうあってほしいという執行役員の要望が出ている。取締役会と執行が両輪で動かなければ改革は進まない」
――ある株主は(会社側と株主側と)どう路線が違うのかというのが見えないと選べないと悩んでいますが、違いは。
瀬戸氏 「いろいろな選択肢の中で一番良いのが何かを選ぶのが経営者の責務だが、今までのLIXILは、実力がある過去のCEOや創業者の一族が持っている意見が忖度され、一番いい選択肢がとれないという状況にあるのが問題だった。私は4月の記者会見で(CEOとして)選択と集中をこうすると発表したが、会社側は(CEOを)今後選びますとしか言っていない。答えを会社側は持っていない。それが問題ではないか」
――透明性が確保されないと改革しても今までとかわらない。(業績不振の)伊子会社ペルマスティリーザ社についてもどういうガバナンスか見えない。改めて調査をして開示すべきではないか。
西浦氏 「まったくご指摘の通りだと思う。就任したら過去の調査も読み返しながらやりたい。社外取締役と株主の接する場も設けて、今までとは格段に違う透明性の下にお示ししたい」
鬼丸氏 「これから日本の社会のことを考えると、グローバルに発展せざるをえない。今までの日本の会社のように伝統に引きずられると成長できない。ガバナンスについても、色々な企業の欠陥についても、早く明らかにすべきと考えている」
鈴木氏 「透明性について、この会社はもう少し外部にいろいろ発信すべきだ。外部のステークホルダーとの対話を考えるべきだ」
浜口大輔氏 (企業年金連合会元運用執行理事)「機関投資家がどういう疑問をもっているかは身にしみてわかっているので、期間を限定して改めてなにが問題だったかを洗い出して、社外取締役として発信したい」
――会社側は10人提案し、全員選ばれたら8対8で分かれます。どうとりまとめますか。
瀬戸氏 「その場合明らかに数は多い。それなりには苦労すると思うし、信頼をすぐに醸成できるかわからないが、与えられた状況の中でベストを尽くす。合わない人や反対勢力でも意見を聞いてやっていきたい。ただ重要なことは、ひとつは潮田氏や山梨氏に影響されないこと、ひとつは継続性を持つことだ。1秒たりとも無駄に出来ない状況なので、判断に時間がかかる16人というのは避けたい」
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