来春新卒採用、理系学生の採用「苦戦」5割超 民間調べ
製造業・非製造業、人員計画大幅増
就職情報大手のディスコ(東京・文京)が23日発表した2020年春入社の採用活動調査で、理系学生の確保に苦戦していると答えた企業が、5割を超えたことがわかった。人工知能(AI)の活用の広がりなどに伴うIT(情報技術)人材の不足を背景に、理系学生の争奪戦は業種を超えて激しさを増している。6月1日の選考解禁を前に、企業側の危機感は強まっている。
調査によると、5月上旬時点で採用活動の感触が「苦戦」「大変苦戦」と答えた企業が文系で36.8%だったのに対し、理系では50.9%にのぼった。19年卒を対象にした調査では3月時点で43.5%、18年卒は同45.4%。理系学生の採用難の傾向が強まっている。
業種別に見ると、メーカーと商社・流通で「苦戦」と答える企業が目立った。「理系学生の母集団形成(応募者数の確保)がうまくいかず、なかなか内定を出せない」(中堅メーカー)、「参加学生の質が低下しているため、選考通過率が芳しくない」(IT大手)などの声があった。
企業も手をこまぬいているわけではない。日本経済新聞社が4月にまとめた採用計画調査(最終集計)で、大卒理系の20年の採用計画人員を19年入社実績に比べ2割多い300人としたNECは来春の採用で初めて「高専卒」を受け入れることを明記した。従来は大卒以上としていた。専門的なスキルが求められるシステムエンジニアを中心に、IT人材の幅広い採用をねらう。同社によると、大卒や修士修了よりも高いスキルを持つ高専卒は少なくないという。
20年に400人以上の理系採用をめざす日本製鉄グループは、学生向けに製鉄所・研究所の見学などを実施し、会社への理解を深めてもらえるよう広報活動に努めるという。20年に前年比4割増の430人の理系採用を計画する配食サービスなどのグリーンハウスグループは、病院などのヘルスケア分野で管理栄養士の募集を強化する。学生説明会やインターンシップを通じ「ホテルやレストランなど、事業の幅が広いという魅力を学生に伝えていく」とした。
ディスコの武井房子上席研究員は「ITとの親和性が高いとの期待が強い理系人材は今後ますますニーズが高まる」と指摘する。6月以降も理系学生の採用活動を続ける企業が多くなりそうだ。
調査は20年度に新卒採用を予定している企業を対象に、8~14日にインターネットを通じて実施。全国1097社から回答を得た。