「レアアースは戦略資源」習主席が産地視察、米けん制
【北京=羽田野主】中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が米中貿易戦争の長期化を意識した視察に力を入れている。20日にはかつて中国共産党が1万キロ以上の道のりを2年かけて行軍した「長征」の出発点を訪れて「我々は新たな歩みを始めるべきだ」と強調した。米国が中国からの輸入に頼っているレアアース(希土類)の産地も訪れ、米国をけん制した。
「我々はかつての長征の出発点にやってきた。いままた新たな長い道のりが始まった」。江西省于都県にある長征記念公園を訪れた習氏は力説した。中国政府系の英字紙チャイナ・デーリーなどが伝えた。記念碑に献花し、遺族らを慰労した。
長征は国民党軍に敗れた中国共産党が拠点のあった江西省瑞金を放棄し、1934年から2年かけて1万2500キロメートルを徒歩で続けた移動を指す。習氏は米中貿易戦争が長引きかねない現状を長征になぞらえた。
この日の朝、習氏は米中貿易交渉の担当者の劉鶴副首相を伴って江西省贛州市にあるレアアースの会社を訪れた。同市は世界的に有数のレアアースの産地だ。習氏は「レアアースは重要な戦略資源だ」と強調。開発利用の技術力をさらに向上させるように指示した。
トランプ米政権は代わりの調達が難しいとして対中制裁関税の対象リストからレアアースを外している。市場では「中国が輸出制限をちらつかせて米国をけん制している」との見方が広がる。
習氏は21日に江西省にある陸軍歩兵学院を訪問し、精鋭部隊の育成現場を視察した。学校の幹部らに「強い軍隊のために力のある人材を送ってくれ」と発破をかけた。
米国を強く意識した国内視察の背景には、習指導部が6月4日の天安門事件30年を前に神経質になっているという事情もある。天安門事件は公の場で語られることはめったにないが、香港や台湾などでは集会や関連行事が予定されている。
習1強体制は批判にさらされやすい敏感な時期にさしかかっており、国内の関心を米国批判に向けて乗り切ろうとする思惑もありそうだ。