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AI時代の人間性復活 スポーツが最後の砦に

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人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)が生活の隅々に及ぶ未来の社会において、スポーツはいかなる価値を持つのか。今回はそんなことを読者の皆さんと一緒に考えてみたい。

3月17日に開幕した第21回日本フットボールリーグ(JFL)は第7節まで進行し、私がオーナーを務めるFC今治は3勝4分け1敗の勝ち点13で現在16チーム中8位につけている。スタッフ、選手一丸になって今季こそ悲願のJ3昇格を果たしたいと思っている。

チームの順位に関してはまあまあという感じだが、試合内容はこれから徐々に良くなってくれるものと期待している。今季からチームの指揮は小野剛監督が執っていて、私は現場についてまったく関知していない。オーナーとしての仕事に東奔西走し、試合はホームゲームを観戦するのがやっとという毎日だ。

5年間採用した2ステージ制を廃止したJFLは今季、ホーム・アンド・アウェーの総当たり2回戦、1ステージ制でチャンピオンを決める。序盤の戦いを見る限り、JFLの勢力図が変わってきた印象がある。昨季まではHonda FC(浜松市)の力が抜けている感があったが、今季は群雄割拠の戦国模様。鈴鹿アンリミテッド(三重県)がスペインから招いたミラグロス・マルティネス監督はJFL初の女性監督で、中川政七商店の中川会長が社長に就任した奈良クラブにはポルトガルでコーチ業を学んだ林舞輝という20代の若いゼネラルマネジャー(GM)がいる。そんなこんなで随分とにぎやかになった感じがある。

FC今治の小野監督もそうだけれど、松江シティFCの田中孝司監督、ヴィアティン三重の上野展裕監督ら指揮官にJリーグ監督経験者が増え、選手もJの経験者が各チームに流入している。今季からJ2のアビスパ福岡から我がチームに加わった駒野友一、東京Vから加わった橋本英郎もそうだ。

南アフリカのワールドカップ(W杯)を一緒に戦った駒野は練習に取り組む姿勢、勝利への執着心で素晴らしいロールモデルになってくれている。そういう指導者や選手がJFLのレベルアップに一役買ってくれるのは間違いない。今季はいつになく混戦になり、J3昇格を懸けた争いはシーズンの最後の最後まで大いにもつれるとにらんでいる。

「夢」求め、増えるJFLへの挑戦者

このJFLの盛り上がりは、やっぱり「夢」と関係がある気がしている。Jクラブを持ちたいとかJリーグに関わりたいという目標を持ったとき、一昔前ならJクラブをいきなりターゲットにしたけれど、今はJFLとかその下の地域リーグから始めるのも面白いんじゃないかと思われるようになった。

出来合いのものを買うとか、敷かれたレールにぽんと乗っかるより、下から始めた方が面白いしコストもかからない。何より自分たちの力で仲間を募ってここまでたどり着いたという充実感が得られる。そういうことがJFLに挑戦者を増やしているのではないだろうか。

「夢」ということに関していうと、今季は、うちのクラブだけでも今治を足場にJリーグや海外に出ていった選手が4人いる。J1の湘南に移籍した小野田将人、ポルトガルのポルティモネンセに移籍した長島滉大、J3の藤枝MYFCに移籍した片岡爽、同じくJ3のヴァンラーレ八戸に移籍した三田尚希だ。今季のJ1で旋風を巻き起こしている大分のストライカー、藤本憲明もJFL出身者である。

これまでは高校や大学を卒業する段階でJクラブから声がかからない選手は枠外という感じだった。今は、下からこつこつと、はい上がることが努力次第で不可能ではないことが分かってきた。そういうこともあって、いろんな背景を持った選手がいろんな希望を胸にJFLに集まるようになっているのだと思う。

昨季まで一緒に戦った主力選手にごっそり抜けられると戦力的には痛い。が、そもそもFC今治のような地方クラブは、Jリーグの一員になれたとしても、選手を引き留める力は都会のクラブに比べたら乏しい。前途有望な選手ほど、育てたそばから引き抜かれるのは宿命のようなもの。だから、それを前提に次から次に選手を育てるしかない。

そういう育成型クラブとして生きていくしかないのだから、むしろ「今治に行けばしっかり育ててもらえてステップアップできる」という評判が実績とともに広まるのは悪い話ではない。高校、大学、他のクラブのアカデミー出身者で今治の門をたたく選手が増えるかもしれないからだ。目先の勝利より、選手に「行きたい」と思ってもらえるクラブになる。それも大事なことだと思っている。

観客動員は昨季より1試合平均で500人ほど増え、確実に3000人は集まる感じになっている。それだけ「今季こそ」と期待されているわけで、本当にJ3昇格のラストチャンスなのだと自分でも肝に銘じている。

使うほど緑豊かな「里山スタジアム」

私が今、傾注しているのはJリーグ仕様のスタジアムの建設だ。こちらの仕事にエネルギーの90%は割いている感じだ。今あるスタジアムに隣接した土地に1万人収容の"里山スタジアム"をつくりたいと考えている。

そんな話をすると「里山って何?」と必ず聞かれる。Jリーグに昇格したら年間30試合ほどのホームゲームを行うスタジアムが必要になるが、ただサッカーの試合をするだけのコンクリートの塊では、建てたそばから朽ちていくだけ。私の頭の中にあるのは、毎日そこに人が集まって、使えば使うほど緑豊かになっていく「里山のようなスタジアム」というイメージである。

スタジアムをつくるには建設資金がいる。当然のことながら、事業計画がしっかりしていないと銀行もお金を貸してくれない。そのために、周りの人々の興味をかき立てるストーリーと、そのストーリーの中で成り立つビジネスモデルを仲間たちと懸命に構築中だ。

これからの社会にはAIやICTに支えられた未来が遠からずやってくる。人間の医者の問診より、AIを組み込んだロボット・ドクターの方が世界中の最先端の研究、論文が頭に入っているから、より優れているという時代がやってくるといわれる。A、B、どちらの異性と結婚した方がいいか、親や友人に相談するよりも、スマートスピーカーを通じてAIに問いかけた方が間違いは少ないというような時代が。「Aの方が離婚しない確率は20%アップします」みたいな。

AIが人間の能力を超える「シンギュラリティー(技術的特異点)」が実現したら、例えば、サッカーの監督だって人間がやる必要はなくなるかもしれない。現実にスペインではAIに采配を任せる実験が進んでいると聞く。私は指導者のS級ライセンスを返納したから関係ないが、これから監督をやる人間はAIもライバルになるかもしれない。本当に大変な世の中が待っているのだろう。

ただ、そういうものが世を席巻すればするほど、私は揺り戻しのような現象も起きると思っている。大リーグではデータ重視の「マネー・ボール」に対して「野球がつまらなくなった」と嘆くファンが増えていると聞く。腑(ふ)に落ちる話だ。

そこからさらに先に進むと、スポーツの別の一面に光が当たる気もしている。スポーツをすること、あるいはスタジアムに足を運んでスポーツを見ることが、人間性を取り戻す作業になるというか。ちょっと大げさにいうと、ホモサピエンスの絶滅を防ぐ最後の砦(とりで)としてスポーツやスタジアムが再評価される時代の到来。

矛盾していることを言うようだが、AIやICTを駆使したスマートスタジアムづくりを実は私も目指している。スタジアムのシートに身を沈めただけで、その人の健康状態がわかるようなことはできないかなどと。この流れは絶対に止められないし、原始的な生活に戻ることなんて誰も望んではいないだろう。しかし、そんなスマートスタジアムを、人間が人間である理由を呼び覚ます場所にしたいとも私は同時に思っている。これも大げさだが、人間性復活のレジスタンスの拠点にしたいと。

湧き出る妄想、多くの企業・人が仲間に

こういうストーリーは、下から積み上げるより、壮大なところから落としていかいないと面白いものにならない気がして、ついつい大風呂敷を広げてしまう。「こんなこともしたい」「あんなこともできるのではないか」「今治を沖縄やサルデーニャ島(イタリア)やロマリンダ(米カリフォルニア州)のような、元気な長寿者が多いブルーゾーンにしたい。その核にスタジアムがある」。次から次に湧いてくる妄想に付き合って、いろいろな企業や人間が仲間になろうとしてくれている。

FC今治でこの春から働き始めた人間に、中央官庁のキャリアの職をなげうって、やって来た若者がいる。彼にしても求めているのは、仕事のやりがいであり、生きがいなのだと思う。大変だけれど、本当の幸せとは何かを考え、転職を決断したのだろう。

AIやICTやVR(仮想現実)という言葉を聞かない日はないけれど、人と人の直接的なつながりを求める動きも、揺り戻しとして強くなる気がしている。うちのようなJFLのちっぽけなクラブに、若い子が働きたいとやってくること自体、何かが既に始まっている証しに思える。

昔から、発展の仕方とは、上から見ていると同じところに戻っているようで、横から見たら上昇している、らせん階段と同じだといわれる。古いことと新しいことは同時に進行するわけで、どちらか一方にだけ目を奪われると、進むべき方向を誤るということなのだと思う。

(FC今治オーナー、サッカー元日本代表監督)

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