ヤクルト村上 若き長距離砲、次代の主軸へ飛躍
ヤクルトの本拠地神宮球場で今季、チームの看板選手である山田哲人や青木宣親らと並んでスタンドからひときわ大きな声援を送られる若者がいる。高卒2年目にして開幕からスタメンに名前を連ねる村上宗隆だ。技術はまだ粗削りながら、右へ左へと外野席にアーチをかけるパワーは魅力たっぷり。将来の4番候補との期待を一身に背負いながら奮闘している。(記録は20日現在)
4月25日の巨人戦。相手先発は球界を代表するエース菅野智之だった。ヤクルト打線は三回、2番青木、3番山田哲、4番ウラディミール・バレンティンが3者連続弾を浴びせる。3連発の余韻さめやらぬ四回にも3者連続安打を放ち、菅野をマウンドから引きずり下ろした。
主軸のど派手なそろい踏みがクローズアップされたこの試合、7番村上も3安打の猛打賞だった。二回に146キロの直球を右前へ、続く三回も直球を左前にはじき返した。風格十分でマウンドにそびえ立つような菅野と対峙しても、ひるむところなく持ち味の豪快なスイングを貫いた。
村上は熊本・九州学院高から2017年のドラフト1位でヤクルト入りした左の長距離打者。バットのヘッドを揺らし、188センチ、97キロの体をさらに大きくみせるような悠然とした構えから、力強くボールをたたく。1年目の昨季は2軍で2割8分8厘、17本塁打の成績を残し、今季は勝負の舞台を1軍に移して高い壁に挑んでいる。
「チームに迷惑をかけてしまっているので」。ここまで11本塁打、33打点といずれもチームトップの成績を残しながら、試合後のインタビューで必ずと言っていいほど口にする言葉だ。「迷惑」の大きな理由は守備。高校時代は主に捕手だったが、プロ入り後は内野手に転向。今季は状況によって一塁か三塁を守るが、ここまでチームワーストの8失策。記録には残らない判断ミスなども散見される。
5月6日の阪神戦は、頼もしさと不安が同居する現状を象徴するかのような試合だった。四回無死一塁、カウント2-2から低めの難しい球を左翼席へ。「(球に)逆らわずに(バットを)しっかり押し込むことができた」と本人納得の一発に、小川淳司監督も「素晴らしい本塁打。あの球を打つのだから大したもの」と手放しの褒めようだった。
ところが喜びもつかの間、六回の守備で暗転する。阪神が1点を返し、なお2死二塁から梅野隆太郎が放った何でもない三ゴロ。グラブをバックハンドに構えた村上はまさかの後逸をしてしまう。ボールが左翼線を転々とする間に二塁走者が一気に生還。好投していた先発デービッド・ブキャナンはここで降板した。救援のデーブ・ハフが後続を抑えて事なきを得たが、試合の流れを一気に失ってもおかしくない手痛い失策だった。
■ゴジラ以来の高卒2年目20本塁打も
拙い守備に我慢しながらも小川監督が起用を続けるのは、それを補って余りあるパンチ力と将来性があるから。ヤクルトの主軸は山田哲が26歳、バレンティンと雄平が34歳。次代を担う大砲として、19歳の村上にぜひとも飛躍してほしいというわけだ。今季は不動の4番だったバレンティンが一時離脱するなど、故障者が続出してチームの台所事情は苦しい。村上への期待はいやが上にも高まっており、青木と山田哲も欠場した5月12日の巨人戦ではプロ入り初の4番にも座った。
「村上にはみんなに応援される選手になってほしい」と小川監督。背番号は平成を代表する左の強打者で、野球ファンに広く愛された松井秀喜氏と同じ55番だ。その松井氏は高卒2年目の1994年に20本塁打を記録した。早くも11号をマークしている村上が松井氏以来となる高卒2年目で20本の大台を突破する可能性は高い。
「ツバメのゴジラ」は目下、守備を猛特訓中。「チームに迷惑を……」というセリフを過去のものとし、自信あふれる表情でヤクルト打線の中心にどっしりと座る日も遠くはなさそうだ。
(木村慧)