急務のAI人材教育、国が認定 教育再生会議が提言
政府の教育再生実行会議(座長・鎌田薫前早稲田大総長)は17日、人工知能(AI)など先端技術分野の人材育成の強化策を盛り込んだ第11次提言をまとめ、安倍晋三首相に提出した。AIを使いこなす人材の不足が指摘されるなか、先端技術の進展に対応した人材を育成できるよう教育の革新を求めている。
提言は「世界レベルで、AIやロボットなどの技術革新が進み、産業や社会の在り方に革命的な変化をもたらそうとしている」と指摘し、「この機会をいかすことのできる人材の育成は極めて重要だ」と強調した。
大学教育では、産業界と協力しながらAIや数理、データサイエンスの分野で求められる知識や技能を特定し、それを身につけられる教育プログラムを国が認定する制度を創設するとした。履修状況を採用活動やインターンシップなどに活用することを想定している。
「新たな時代のリテラシー」として、文系・理系に関係なく全ての大学生がAIなどの基本的な素養を身につけられるよう、標準カリキュラムを作成するなどして環境づくりを進める。
高校教育では、AIなどを理解するうえで必要な「確率」「統計」「行列」などを確実に学ぶようにする。技術の発展に応じて教育内容を迅速に変えるため、学習指導要領の一部改訂や教科書の一部訂正といった制度を活用するとした。
経済産業省の試算によると、AIなどIT(情報技術)の知識を持つ人材は日本の産業界で2020年末に約30万人不足するとされる。政府の統合イノベーション戦略推進会議は3月、AIを使いこなす人材を年間25万人育成する戦略案を公表した。教育再生実行会議も今回の提言に戦略案の一部を取り込み、問題意識を共有している。
政府がAI人材の育成強化に本腰を入れるなか、人材不足に直面している企業の側も育成策を打ち出している。
ダイキン工業は大阪大学と組み、AI人材の「社内大学」を設立。18年度から毎年、新入社員のうち100人について通常業務を免除し、2年間かけてAIやデータ分析を学ばせる。ソニーは初心者がAI開発ソフトの仕組みを学べるプログラムを開発し、社内で2000人を育成した。18年秋から社外へのプログラム提供も始めている。