大学生就職率97%、学生確保に企業知恵絞る
今春卒業した大学生の就職率は97.6%と、1997年の調査開始以来2番目に高かった。空前の「売り手市場」で、学生が就職先を選別しようとする動きが強まっている。企業はつなぎ留めに必死で、学生ニーズを探る動きが活発になっている。
就職率は今春卒業した大学生の4月1日時点の就職希望者に占める就職者の割合で、文部科学省と厚生労働省が17日に発表した。前年同期に比べて0.4ポイント低下したものの、依然として高水準が続いている。
これまで企業は「リクナビ」「マイナビ」などの情報サイトを通じて広く学生を集めるのが一般的だったが、企業が学生に歩み寄ろうと様々な対策に乗り出している。
そのひとつが社員に有望学生を紹介してもらう「リファラル採用」だ。2018年秋に導入したUSEN-NEXT HOLDINGSは内定者の後輩や社員の知人を紹介してもらい、採用に至れば紹介した人に1人当たり5万円を支給する。20年卒の内定者のうち、約50人がリファラル採用で、「以前より有望な学生に出会いやすくなった」(住谷猛執行役員)という。
居酒屋などを運営するオーイズミダイニング(神奈川県厚木市)は一度内定を出した学生が留年した場合、内定を保持できるようにした。1年間は大学に籍を置きながらアルバイトとして就業してもらうなどし、翌春卒業した時点で正社員に登用する。
就職情報会社のマイナビ(東京・千代田)の調査によると、20年春卒業の大学生・大学院生の4月末時点の内定率(内々定含む)は39.3%。そのうち、就職活動を終えた学生は30%にとどまる。7割近くが内定を持ちながらも就活を続けている計算で、内定辞退の対策が急務になっている。
機械商社の日伝では内定者向けのSNSを導入。内定者同士で自由にメッセージのやりとりをしてもらっている。内定者ごとにSNS上の行動履歴が残るため、「アクセスが少ないなど辞退しそうな学生を早期に発見し、対策ができるようになった」(同社)。
内定者向けSNSを提供するEDGE(東京・千代田)によると18年度の同社サービスの導入企業数は前年度に比べ約4割増加。「今年は特に大手企業からの引き合いが強く、辞退防止への関心が高まっている」(同社)という。
人手不足は今後も続く見通し。「これからは自社に合った採用手法や対策を積極的に取り入れないと人材確保は難しい」(採用コンサルタントの谷出正直氏)との見方が多い。
(鈴木洋介)
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