JDI、5年連続の最終赤字 再建綱渡り続く
経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)が15日発表した2019年3月期の連結決算は、最終損益が1094億円の赤字(前の期は2472億円の赤字)と5年連続の赤字になった。スマートフォン(スマホ)用液晶パネルが苦戦し、工場の減損損失が発生するなど環境は厳しい。台中3社連合による最大800億円の金融支援を完了させ、すぐにでも資金を確保したいが、肝心の台中勢の機関決定は遅れている。資金繰りはなお課題で、JDIの再建は綱渡りが続く。
「度重なる延期になり申し訳ない。(台中連合とは)協議を継続している」。「台中連合の出資が完了するまでは官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)に支援していただく」。JDIの月崎義幸社長らは決算会見で、台中連合の機関決定が遅れている理由を問われると、歯切れの悪い回答を繰り返した。
JDIは4月12日、台湾電子部品メーカーなど台中3社連合と最大800億円の金融支援で合意したと発表した。しかし、その後、台中連合が金融支援に必要な機関決定を延期すると相次ぎ表明。本来なら6月18日のJDIの定時株主総会で最終的に承認される予定だったが、間に合わないため、改めて臨時総会を開く見通しになっている。
複数の交渉関係者は「金融支援の合意後、台中連合がJDIの詳しい資産査定を進めるなかで、JDIの事業がさらに悪化していることが判明した」と話す。JDIは「資産査定は十分にやっている」とするが台中連合は手続きなどで慎重にならざるを得ないようだ。
JDIは米アップルの「iPhone(アイフォーン)」の液晶パネルを生産しており、中国経済の減速で業況は厳しい。JDIは19年4~9月期の売上高が前年比10%減るとみるが、一段の下振れリスクもある。
このまま台中連合による資金注入が進まないようだと、JDIの資金繰りに影響が出そうだ。
3月末こそ現預金は700億円近くあるが、部材の支払いなどがかさみ、台中連合との交渉が山場を迎えていた4月上旬、「4月のうちにJDIの資金が足りなくなる可能性がある」(関係者)との声があった。その後、何とか台中連合との合意に至り、INCJから4月19日付で200億円のつなぎ融資を取り付けた。JDIによると必要であればさらに400億円のつなぎ融資を見込めるとしている。
しかし、毎年秋に発売される新型アイフォーン向け液晶パネルの部材調達などを考えると一定の資金は不可欠だ。昨年も増産などの運転資金として450億円を調達しており、今年も夏にかけて数百億円規模の資金が必要になるとみられる。台中連合の支援が白紙に戻れば、「早ければ6月に資金繰りのめどが立たなくなる恐れがある」(関係者)との見方もある。
台中連合の支援が崩れる可能性について月崎社長は「代替プランもある」と話しており、交渉は予断を許さない。
JDIは15日、病気療養中の東入来信博会長兼最高経営責任者(CEO)が退任し、月崎社長がCEOを兼務すると発表した。新体制で台中連合と詰めの交渉を進める。
ただ液晶パネルの事業環境は厳しく、単独従業員の2割にあたる1000人規模の人員削減も進める。自己資本比率は3月末で0.9%と債務超過寸前まで低下。JDIは決算短信に「継続企業の前提に重要な疑義が生じている」と記載し、投資家に注意を促した。(龍元秀明、増田咲紀)
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