三菱地所、初の自社株買い 1000億円、3期連続最高益
三菱地所は14日、同社初となる自社株買いを実施すると発表した。1000億円分を買い入れる。これまで都市開発を中心に成長投資を優先してきたが、積み上がった資金を活用して資本を圧縮し、自己資本利益率(ROE)向上に振り向ける。今月に入ってディー・エヌ・エーが異例の規模の自社株買いに踏み切ったほか、旭化成や江崎グリコが久しぶりの実施を決めるなど、余剰資金を活用した資本効率の改善の動きが広がっている。
菱地所は自己株式を除く発行済み株式総数の4.68%にあたる6500万株を上限に取得する。大手不動産では2018年に三井不動産が初の自社株買いを実施しており、菱地所の動きが注目されていた。配当性向の目安も従来の25~30%から30%程度に変更し、株主還元を強化する。
同日会見した片山浩取締役は従来、政策保有株の売却などと成長投資を優先的に進めて「総資産利益率(ROA)の改善を進めてきた」と説明。19年3月期の営業キャッシュフロー(営業活動で生じる現金収支)が3459億円に達するなど稼ぐ力が高まったため、今後は「資本効率を意識してROEの改善を進めたい」と述べた。
6月に期限を迎える買収防衛策を更新しないことも発表した。市場では「資本効率向上策には株価を維持する狙いがあるのだろう」(外国証券)との見方もある。
今年の決算発表シーズンは有力企業の異例の自社株買い表明が目立っている。10日にはディーエヌエが500億円を投じて発行済み株式の約4分の1を取得すると発表。旭化成は17年ぶり、江崎グリコも11年ぶりの実施を発表した。
菱地所が14日に発表した19年3月期の連結純利益は、前の期比12%増の1346億円と3期連続で最高益を更新した。賃貸マンションを系列の不動産投資信託(REIT)などに売却したほか、オフィスビル賃貸も好調だった。年間配当は4円増の30円とする。
売上高にあたる営業収益は6%増の1兆2632億円、営業利益は8%増の2291億円だった。全国のオフィスビル空室率は3月末で1.8%とほぼ満床で、平均賃料は1年前より2%上昇した。「丸の内など競争力の高い物件の賃料収入は伸びしろがある」(片山取締役)という。
20年3月期は営業収益が前期比8%増、純利益は2%増の1370億円を見込む。
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