LIXIL、総会へ委任状争奪戦 新体制案 瀬戸氏含まず
機関投資家 異例の共同歩調
LIXILグループは13日、リコー元社長の三浦善司氏ら8人の次期取締役候補を会社提案として発表した。前最高経営責任者(CEO)で会社側と対立する瀬戸欣哉氏は候補としなかった。6月の定時株主総会は、瀬戸氏側と、会社側のどちらが経営権をおさえるかの争いとなる。委任状争奪戦(プロキシーファイト)の可能性がある。機関投資家が異例の共同歩調をとってきた今回の問題は、トップによる後継候補の指名が一般的だった日本の企業統治(コーポレート・ガバナンス)の転機となりそうだ。
会社側は取締役候補8人のうち7人を社外取締役とした。三浦氏のほか、JVCケンウッド元会長の河原春郎氏、ベネッセホールディングス副会長の福原賢一氏などを候補とした。社内からは執行役副社長の大坪一彦氏のみを候補とした。指名委員会は「社外取締役が過半数を占める取締役会を組成すべきだ」とコーポレート・ガバナンスに配慮したと説明した。
瀬戸氏については業績低迷などを理由に選ばなかった。会社側の社外取締役候補のうち元最高裁判所判事の鬼丸かおる氏と元あずさ監査法人副理事長の鈴木輝夫氏の2人は、株主提案の候補にも含まれている。
瀬戸氏と旧INAX創業家の伊奈啓一郎取締役は13日、会社側の取締役候補について「株主提案した取締役候補8人の一括選任を引き続き求め、株主の信を問いたい」との共同声明を発表した。
また株主側だけでなく、会社側の取締役候補にもなった鬼丸氏ら2人は同日発表したコメントで「(今朝まで会社から)連絡は一度も受けていない」としたうえで、「同意していない」と明らかにした。受諾するかどうかは「指名委員会の真意を聞いたうえで、受諾の可否を決定する」とした。
これまで潮田洋一郎氏や側近の山梨広一社長兼最高執行責任者(COO)は取締役の退任後も要請があれば経営に関与する姿勢を示していた。だが、指名委員会委員の菊地義信氏は13日の記者会見で、潮田氏の会社への関与を否定した。山梨氏については「新たに選任された取締役会が決定することで、指名委員会としては考えていない」と明言を避けた。山梨氏は「指名委員会の考えに沿う」と述べた。
株主連合の一社である英ポーラー・キャピタル・パートナーズの小松雅彦氏は「LIXILグループの経営が分かる取締役が減った場合、潮田氏の影響力を排除することが可能か疑問」と述べた。13日取材に応じた瀬戸氏も会社側の取締役候補について「潮田氏の影響力があるのではないかと疑問を持つのは当然だ」と述べた。
今後の焦点は6月の株主総会となる。
同社の取締役数の上限は定款上16人となっている。瀬戸氏側は14人全員が選ばれる可能性があると指摘しており、この場合、取締役のうち両陣営のどちらが過半数を占めるかがポイントとなる。一方、会社側は、13日の記者会見で取締役の定数は「8人程度とすべきだ」とした。ただ定款変更議案提出の可能性は「現時点で議論されていない」とした。
「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」はトップ人事に透明性と客観性を求めている。欧米では、少数株主が会社側に経営改善を求めて共同歩調をとるケースが増えており、日本でも今後会社側が少数株主の意向に配慮する必要性が高まりそうだ。
LIXILグループのトップ交代をめぐる外部弁護士による検証結果は、現在の社外取締役について「潮田氏に対する遠慮があった」と結論づけ、実質的な企業統治の課題を指摘していた。
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