米追加関税 黒崎播磨が一部値上げ、西部技研は影響懸念
米政府が10日、中国から2千億ドル(約22兆円)分の輸入品にかける追加関税を10%から25%に引き上げる制裁措置を発動し、九州企業も影響を注視している。製鉄所向け耐火物などを製造する黒崎播磨は中国製品の一部を米国に輸出する際、値上げを検討する方針を明らかにした。
「SNプレート」と呼ぶ連続鋳造設備の流量制御に使う部材や関連装置が対象で、関税引き上げに対応する。品質維持に欠かせない高機能品のため、これまでの関税引き上げ分も米国の顧客から価格転嫁を受け入れてもらってきたという。
同社全体では「限られた数量の製品で関税引き上げの直接的な影響はあまりないだろう」(伊倉信彦社長)とする。
西部技研(福岡県古賀市)は中国で揮発性有機化合物(VOC)の除去装置などを生産しており将来、米国に輸出する可能性もある。「米中の貿易摩擦が泥沼化すれば、ビジネスチャンスが狭まる」と心配する。
九州経済産業局が2~3月に九州地区の製造業を調査したところ、産業機械メーカーなどから摩擦の影響を懸念する声があった。同局は「1~3月ごろから電子部品や装置産業で弱い動きが見られる。追加関税で影響が拡大する恐れがある」とみる。
日銀北九州支店の梅田秀彦支店長は「制裁品目は家電など消費財が目立つが、中国製品に九州企業の電子部品が使われるケースも多い」と影響を注視する。サービス業でも第一交通産業の田中亮一郎社長が「車両や建設資材、燃料価格を押し上げるなど様々な懸念がある」と話す。
食品や化学原料の包装材メーカー、大石産業の大久保則夫社長は「前回の制裁関税では中国が古紙の仕入れ先を米国から日本に振り替えた。国内の古紙市況上昇で前期は減益要因となったが、徐々に影響は落ち着いている」と説明する。
プラスの影響を予想する企業もある。ホームセンター、ナフコの石田卓巳社長は「中国の景気調整で人件費上昇などが一服すれば、輸入販売している中国製品の原価を抑えられるかもしれない」とみている。