中国次期駐日大使「自由貿易の維持、日中の責務」
日朝首脳会談「支持する」
【北京=高橋哲史】中国の次期駐日大使に決まった孔鉉佑外務次官が10日、北京に駐在する日本メディアの取材を受けた。激しさを増す米中貿易戦争を念頭に「自由貿易体制を維持していくのは中日双方に課された大きな責務だ」と述べ、日本との連携に期待を示した。安倍晋三首相が条件なしでの開催をめざす日朝首脳会談に関しては「支持する」と表明した。
孔氏は「中国と日本は新しいスタートラインに立った」との認識を示した。そのうえで「世界における新しい中日関係の構築を目標に、日本のみなさんと知恵を絞って努力していきたい」と抱負を語った。
中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は6月28~29日に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて訪日し、安倍晋三首相と会談する。中国の国家主席が日本を訪れるのは、2010年の胡錦濤(フー・ジンタオ)氏以来となる。
孔氏は「日本側がホストとして、成功裏にG20首脳会議が開催されるよう積極的にサポートしていきたい」と述べた。
日本との経済協力は、中国が提唱した巨大経済圏構想「一帯一路」が一つの軸になるとの考えを強調した。4月末に北京で開いた「一帯一路」の首脳会議に日本から自民党の二階俊博幹事長が出席し、習主席と会談したことに触れ「これをきっかけに日本側はさらに積極的で明確な姿勢で一帯一路に参加してもらいたい」と訴えた。
孔氏は現在59歳。中国東北部の黒竜江省の出身で、朝鮮半島にルーツを持つ朝鮮族だ。上海外国語学院(現在の上海外国語大学)で日本語を学び、中国外務省に入った。
日本での勤務経験は通算で10年以上に及び、流ちょうな日本語を話す。中国外務省でも屈指の日本専門家「ジャパンスクール」として知られる。
17年からは朝鮮半島問題の特別代表も務め、北朝鮮にもパイプがある。孔氏は日本と北朝鮮の対話を支持するとともに「しかるべき建設的な役割を果たしてもらいたい」と期待を示した。
現在の程永華駐日大使は在任期間が歴代最長の9年あまりに及んだ。10年に着任し、12年の沖縄県・尖閣諸島の国有化に伴う日中関係の「最悪期」を経験した。
トランプ米政権が10日に2千億ドル分の中国製品に課す制裁関税を10%から25%に引き上げ、米中の貿易戦争は出口が見えなくなっている。習政権は米国をけん制するねらいもあり、日本を含む周辺国との関係強化に動いている。
中国の李克強(リー・クォーチャン)首相は今年3月の記者会見で、交渉が続く日中韓の自由貿易協定(FTA)の早期締結に意欲を示した。貿易の多国間主義を掲げ、世界貿易機関(WTO)の改革にも前向きだ。
中国は今年の日中韓首脳会議で議長国を務める。孔氏はこうした外交イベントでも日本政府との調整役を担う。