マイクロソフト「大型買い物リスト」から見える戦略
MSは1987年7月、ソフトウエア開発の米フォアソートを現金1400万ドルで買収した。フォアソートの主力製品だったプレゼンテーションソフト「パワーポイント」はMSの業務ソフト「オフィス」にまとめられ、MSとパワーポイントはプレゼンソフト市場を支配した。
これは今までで最も効果的な買収の一つだと評価する声もある。それ以降、MSが買収した企業は250社を超える。どの企業に最も多額の資金を払ったのだろうか。CBインサイツのM&Aデータを活用し、MSによる大型買収の上位10件のビジュアル年表を作成した。
マイクロソフトの大型買収上位10件
MSによる87年以降の大型買収上位10件は以下の通りだ。なお、MSの大型買収上位10件の買収総額は630億ドルを上回る。これはMSの現在の時価総額の約7%にあたる。上位10社の企業評価額はいずれも10億ドルを上回っていた。
1.ビジネス向けSNSの米リンクトイン(買収額262億ドル、2016年):現時点では、MSによる最大の買収だ。
2.スカイプ・テクノロジーズ(ルクセンブルク、85億ドル、11年):動画チャットやインターネット通話サービスを手がけていた。
3.米ギットハブ(75億ドル、18年):ソフトウエアのもとになるソースコードの運営プラットフォーム。買収額は当時、ベンチャーキャピタルの出資を受け、法人向けソフトウエアを手掛ける企業としては過去最大だった。その後、欧州ソフトウエア最大手の独SAPがオンライン調査支援ツールを手がける米クアルトリクスを80億ドルで買収し、ギットハブの買収額を上回った。
4.ノキア(フィンランド)のデバイス・サービス部門(72億ドル、14年):MSは14年の買収から2年足らずでこの事業を手放した。この試みは失敗だったと公言し、MSの携帯電話事業のリストラに踏み切る方針を示唆した。
5.米アクアンティブ(63億ドル、07年):米アベニューA、米アイフロンティア、英アトラスDMTなどのデジタルマーケティング企業やテクノロジー企業を傘下に抱えていた。
6.モージャン(スウェーデン、25億ドル、14年):人気オンラインゲーム「マインクラフト」の開発を手掛ける。マインクラフトはパソコンやゲーム機など向けに様々なバージョンがリリースされ、累計販売数は1億4400万本以上と「テトリス」に次ぐ過去2番目の売り上げを誇る。
7.米ビジオ(14億ドル、99年):米ワシントン州シアトルに拠点を置くソフトウエア会社で、主力製品は作図ソフトウエア「ビジオ」だった。MSに買収されて以来、この部門は「マイクロソフトビジオ」の名でこのアプリの開発を続けている。
8.ナビジョン(デンマーク、13億ドル、02年):中小企業向けに一連の会計アプリを提供していた。
9.米ヤマー(12億ドル、12年):メッセージが不特定多数に公開されないビジネス用SNSとして、アイデアの共有やプロジェクトでの協力、質問、フィードバックの要請などに使われた。
10.ファストサーチ&トランスファ(ノルウェー、12億ドル、08年):企業検索向けソフトウエアの開発を手がけていた。現在はマイクロソフト・デベロップメントセンター・ノルウェーと呼ばれる。
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