三越伊勢丹の19年3月期、最終損益134億円の黒字に転換 構造改革効果 インバウンド好調
三越伊勢丹ホールディングスが8日発表した2019年3月期連結決算は、最終損益が134億円の黒字(前の期は9億6000万円の赤字)に転換した。伊勢丹松戸店(千葉県)の閉鎖など構造改革の成果が出たほか、人件費が減った。一時期は減少が目立ったインバウンド(訪日外国人)消費は、足元では回復している。
売上高は5%減の1兆1968億円だった。暖冬などの影響で主力の衣料品の売り上げが減ったものの、売り場の強化を進める雑貨は伸びた。閉鎖店舗などを除く既存事業ベースでは増収を確保した。
都心にある伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店の主要3店の売上高は5248億円と1%増えた。とりわけ訪日客が多い三越銀座店は免税売上高が14%増え、同店の売り上げに占める割合は29.8%と2.6ポイント上昇した。名古屋市や福岡市などでもインバウンド需要が伸び、同社の国内百貨店全体の免税売上高は755億円と12%増えた。
免税売上高は年末から年明けにかけて中国の電子商取引の規制が強まった影響で一時的に落ち込んだが、それ以降は「前年同期比でプラスに戻ってきている」(伊倉秀彦最高財務責任者)。化粧品や宝飾品などが引き続き好調だ。
これは業界全体の傾向で、高島屋の免税売上高も足元で2ケタ増、J・フロントリテイリングも回復が目立つという。業界の一部には「転売業者の手元の在庫が減っている」との見方がある。
三越伊勢丹の営業利益は292億円と20%増えた。不採算店の閉鎖に加え「人員構成のひずみをなくす」(杉江俊彦社長)ために自然減などでグループ全体で人員を削減。連結ベースで販売費・一般管理費を7%減らした効果が出た。
特別損益では、事務所用不動産の譲渡損のほか、17年に買収したエステ会社を巡る競争環境が厳しくなり、関連する「のれん」を減損。一方でオフィスビルの譲渡益約300億円を計上するなどし、最終損益の黒字化を果たした。
20年3月期は売上高は前期比1%減の1兆1900億円、純利益は4%増の140億円を見込む。伊勢丹相模原店(相模原市)など不振店を閉め、採算が改善する。免税売上高の予想は開示しなかったが、米中貿易摩擦などで「中国の人が(直接的な影響を受けない)日本を旅行先に選ぶ傾向がある」(杉江社長)といい、増加基調が続きそうだ。
10月の消費増税は、上半期の駆け込み需要と下半期の反動を含めて通期で20億円の減収要因になるとみている。
費用面では、人件費の削減を続ける半面、力を入れる化粧品サイトの販売促進費や、オンラインでのギフト販売などデジタル投資は積み増す。「成長を見据え、今年は積極的にお金をかけていく」(杉江社長)方針だ。
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