イスラエルとハマス、停戦合意も不信根強く 戦闘継続を表明
【カイロ=飛田雅則】パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは6日、エジプトなどの仲介でイスラエルと停戦したことを明らかにした。イスラエル軍のガザに対する空爆や、ガザからのロケット弾発射は停止しており、状況は沈静化した。ただ双方の不信感は根強く、衝突が再燃する恐れも残る。
4日以降の衝突激化を受け、エジプトと国連などが停戦に向けて仲介を続けてきた。ハマスが6日「停戦が発効した」と表明すると、イスラエル軍はガザに近い道路封鎖などの制限を解除すると発表した。
停戦協議でハマスはイスラエルに、ガザ境界の封鎖解除や物資搬入の制限撤回などを求めたもようだ。ガザ関係者はロイター通信に「イスラエルがこれらを条件に停戦に合意した」と語った。ハマスはパレスチナ自治政府の主流派ファタハと衝突し、2007年にガザを実効支配して以降、イスラエルとガザの境界は壁などでふさがれ、経済的に苦境にある。
一方、イスラエルは9日が独立記念日で、14日から商都テルアビブで欧州最大級の音楽祭「ユーロビジョン」など重要行事を控える。治安の確保を優先し停戦に応じたもようだ。
ハマス側が求めているとされるガザ封鎖解除などは困難が伴いそうだ。イスラエルのネタニヤフ首相は4月の総選挙の結果を受けて、他党との連立協議のさなかにある。5期目を目指すネタニヤフ氏にとってガザに強硬姿勢を求める極右政党の取り込みが不可欠となっており、ハマスに有利な対応は難しい。
イスラエルは今回の停戦条件などを明らかにしていない。これまでは「テロ組織」と認定するハマスに対し、イスラエルの承認や武装解除を求めてきた。
一方、ネタニヤフ氏は6日「ガザに対する作戦は終わってはいない。我が国は(作戦の)継続のため準備をしている」と強調した。ハマスも「権利を取り戻すまで、戦いを続ける」と強調する。
今回の衝突はガザで3日に行われたイスラエルへの抗議デモで、参加者の一部が同軍に発砲し兵士が負傷したことがきっかけだ。イスラエルは約350カ所のハマス関連施設など空爆。一方、ガザからイスラエルに約690発のロケット弾が発射されるなど近年で最大規模の応酬となり、イスラエルで4人、パレスチナで25人が死亡した。
近年ではイスラエルとハマスは08年、12年、14年に本格的な紛争が発生。18年にも衝突した。そのたびに停戦で合意しながらも、その後、攻撃が再開されてきた。再び大規模な衝突が始まる可能性はくすぶっている。