1軍への多くの壁 プロ仕様の心技体で乗り越えろ
プロ野球開幕から1カ月あまり、注目のルーキーたちがプロの壁にはね返されている。開幕1軍入りを果たした藤原恭大(ロッテ)は結果を出せず2軍落ち。4球団が競合した根尾昂(中日)はケガもあり、本領発揮にはしばらく時間がかかりそうだ。
野手が一本立ちするまでには、いくつもの壁がある。最初の一歩はプロのスピードとパワーに負けない体をつくることだ。高卒の藤原や根尾はまだ線が細く、プロ仕様の体になっていない。藤原がどれだけフルスイングしても、いまの体力ではプロの投手に力負けする。
体が大きくなり、プロの球に慣れると2軍で打てるようになってくる。だが本当の勝負はここからだ。2軍では打ちまくるのに、1軍に行くと鳴かず飛ばずで、上と下を行ったり来たりという選手が出てくる。
僕自身がそうだった。高校から入団して3年目には2軍で本塁打王や打点王を取っていたのに、1軍に呼ばれると結果が出ない。16本塁打を打ってようやく手応えをつかんだのは9年目のこと。39本塁打でタイトルを取ったのはその翌年だった。
2軍でも調整などで1軍レベルの投手が登板する。彼らとの対戦で結果を出せる打者はそれなりの技術を身につけている。それでも1軍で打てないのは、力がないというより、力を出させてもらえないからだ。
■変化球の洗礼に続き厳しい内角攻め
1軍と2軍ではバッテリーの組み立てが全く変わる。直球でどんどんストライクを取ってくる2軍に対し、1軍では変化球攻めにあう。打撃の基本は直球をしっかり打ち返すことだが、1軍では多彩な球種でカウントを取られ、追い込まれると際どいコースで誘われる。ストライクとボールを見極め、甘い変化球をしっかり仕留めないと勝負できない。
変化球の洗礼をクリアすると内角攻めが待っている。外の変化球に踏み込めないよう、胸元に厳しいボールが来るようになる。裏返せば内角を攻められるようになったら、相手に警戒され始めた証拠。オープン戦の成績が当てにならないのは、シビアな内角攻めがないからだ。
手ごわいのは相手ばかりではない。若い頃の僕は「ダメならすぐ2軍」という恐怖を常に感じながら1軍の打席に立っていた。それが焦りを生み、力を出せない悪循環に悩まされた。「ダメでもまた2軍で頑張ればいい」と開き直って、恐怖を乗り越えるしかない。
若い選手が1軍でチャンスをもらうには守備を鍛えるのが近道だ。守備固めで出場し、1打席もらう。そこで結果を出し、少しずつ前に進む。アマチュアでは強打者でも、それだけで使われるほどプロは甘くない。
2年目を迎えた日本ハムの清宮幸太郎は春季キャンプで昨年との違いを「守備や走塁への意識が高まったこと」と話したという。経験をしっかりと消化し、思考もプロ仕様になってきたようである。
(野球評論家)