トランプ氏元側近バノン氏、ヘッジファンドと対中共闘
【ニューヨーク=宮本岳則】トランプ米大統領の側近だったスティーブン・バノン元首席戦略官は25日、著名ヘッジファンド創業者カイル・バス氏などと組み、中国共産党を批判する講演会を開いた。米政権に対しては米中貿易協議で強硬な姿勢をとるよう要求。早期合意を促す米ウォール街や米産業界に批判の矛先を向け、「共産党のロビイング組織だ」などと持論を展開した。
トランプ大統領の「思想の支柱」と言われたバノン氏は他の政権幹部との対立を繰り返し、2017年8月にホワイトハウスを去った。現在は欧州のポピュリズム(大衆迎合主義)勢力の支援を手がけるほか、中国共産党の脅威を訴える新団体の立ち上げに関わるなど活動を活発化させている。同団体が25日開いた講演会には約100人の参加者が集まり、米メディアも様子を報道するなど、関心の高さをうかがわせた。
この日注目されたのはテキサス州ダラスに本拠を置く有力ヘッジファンド、ヘイマン・キャピタル・マネジメント創業者のカイル・バス氏がバノン氏と「共闘」する姿勢を見せたことだ。米住宅バブル崩壊や欧州債務危機を的中させ、ファンド業界で一躍有名になった。一時は「日本破綻論」を唱えていたことでも知られ、最近は中国を標的にしていた。講演では「世界史上、例を見ない債務の積み上がりだ」と警鐘を鳴らした。
バノン氏とバス氏は中国の外資規制や知的財産保護の不備など、制度問題の解決なしに、トランプ政権が拙速に中国と妥結することに反対する。講演では中国共産党を旧ソ連に重ねるなど、中国脅威論を盛り上げたいようだ。米金融界や産業界は交渉破談で世界経済が減速すること恐れ、交渉妥結をホワイトハウスに働きかけているが、バノン氏らはこうした動きをけん制した。