スマホ「圏外」23年度に解消、過疎地に基地局計画
スマートフォン(スマホ)など携帯電話の電波がつながらない「圏外」の地域が2023年度までになくなる見通しとなった。KDDIと楽天モバイルが過疎地に基地局を整備する計画を総務省に出した。同省は補助金で過疎地での共同整備を促す。次世代通信規格「5G」の基地局は携帯4社の24年度までの整備計画から2割上積みすることを目標に資金支援する。
山間部などでは、人が住んでいながら携帯大手の電波が届かない地域が残る。総務省や地方自治体が補助金などで基地局の整備を支援してきたが、1万6000人が携帯の「圏外」に暮らす。
KDDIと楽天モバイルは2月までに総務省に基地局整備計画を出した。この中で23年度中に圏外の地域を解消する方針を記した。今のスマホで使える4Gの基地局を整備する。ただ、こうした地域は小規模の集落が多く整備費に見合った収益をあげにくい。2社の計画では本格的な整備は21年度以降にずれ込む。
一方、総務省は整備の前倒しを促すため、20年度予算で新たな補助金をつくる構えだ。電波の届かない地域で複数の携帯会社が共同で基地局を整備する場合に手厚い補助金を出す。KDDIや楽天モバイルの整備計画にNTTドコモやソフトバンクが参加することを想定している。圏外の解消を急ぐとともに、多くの携帯会社の電波が届くようにする。
20年春に商用サービスが始まる5Gでは携帯4社に基地局の増設を呼びかける。4社は24年度までに計7万局つくる計画を同省に提出した。地方で整備する場合に20年度から補助金を出し、24年度までに計画より2割多い8万4000局の整備を目標とする。
5Gは速度が速いうえ、多くの機器を同時に接続でき、通信の遅れも少ない。新サービスとして期待されるバスの自動運転や遠隔医療は人手不足に悩む地方でニーズが強い。生産工程を自動制御する「スマート工場」は地方の産業の維持にもつながる。
自民党内には5Gを安倍政権が掲げる地方創生に役立たせるべきだという意見も多い。石田真敏総務相も「5Gがあるかないかでその地域の発展の度合いが変わってくる」という。地方の基地局整備の加速はこうした方針に沿ったものといえる。
総務省は20年度予算の概算要求に基地局整備の補助金を盛り込む。携帯会社や放送局が国に支払う電波利用料を補助金の財源にする考えだ。