エジプト大統領の任期延長へ 改憲、88%が賛成
【カイロ=飛田雅則】エジプトの選挙管理当局は23日、20~22日に実施した国民投票で憲法改正案への賛成票88.83%となり改憲が承認されたと発表した。新憲法の柱は大統領の任期延長で、現職のシシ大統領は最長2030年まで計16年の在職が可能となった。経済や治安の回復でシシ氏を評価する声もあるが、大統領の権限や軍の力が強まり、強権支配に拍車がかかる懸念がある。
改憲案は16日に国会で可決されたばかりで、スピード成立となった。有権者は約6200万人で投票率は約44%だった。新憲法では大統領の任期が現行の4年から6年に延長される。改選は一度に限り認め、最長で2期12年の在籍が可能になる。18年の選挙で再選されたシシ氏の任期は22年までだったが、24年まで延び、さらに同氏に限り3選を認めた。
大統領に最高裁長官の任命権を付与するなど権限を強化した。軍の役割についても「憲法と民主主義の保護」が加えられた。
エジプトでは11年の民主化運動「アラブの春」で約30年にわたる独裁のムバラク政権が崩壊。13年に国防相だったシシ氏が事実上の軍事クーデターでイスラム原理主義組織出身のモルシ大統領を追放。シシ氏は14年の選挙を経て政権を発足させた。
改憲賛成派は経済再建やテロ掃討には大統領の任期延長が不可欠と主張してきた。一方、反対派は現政権が治安維持を名目に、反体制派を拘束するなど強権的手法を繰り返していると批判した。改憲について国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは「人道危機を一段と悪化させる」と非難している。