円滑な皇位継承を重視 宮内庁、側近人事スライド
5月1日の天皇の代替わりに伴い、新天皇を補佐する侍従長に小田野展丈東宮大夫(71)を、上皇となられる天皇陛下を補佐する上皇侍従長に河相周夫侍従長(66)を充てる人事が23日、閣議で決まった。現在の側近トップをそのままスライドさせ、新皇室の安定的なスタートを狙った。
皇室典範特例法は退位した天皇陛下の敬称を「上皇陛下」、皇后さまは「上皇后陛下」と呼ぶよう定める。政府は皇位継承順位1位となる秋篠宮さまの正式な敬称を「秋篠宮皇嗣殿下」とした。
23日に閣議決定された宮内庁幹部人事はいずれも1日付。新天皇に即位した皇太子さまが即位関連の儀式を終えた後、小田野氏と河相氏の認証式に臨まれる。
小田野氏は昭和45年、外務省入省。ミャンマー大使や欧州連合(EU)政府代表部大使などを歴任した。2016年5月から皇太子さまの側近部局である東宮職の長、東宮大夫に就き皇太子ご夫妻の公務や代替わりの準備などに携わってきた。
侍従長は過去2代、同省事務次官OBが続いてきたが、小田野氏は次官を経験していない。一方で、上皇侍従長となる河相氏は昭和50年入省の外務次官経験者だ。
また、小田野氏はすでに71歳と、宮内庁幹部の勇退の一つの目安とされる70歳を超えている。それでも、新たな象徴として多くの公務を担われることになる皇太子さまの最側近として引き続き侍従長に登用されたのは、「前例よりも、円滑な皇位継承が行われることが最優先」(宮内庁幹部)との考え方が大きい。特に代替わりの1年間は諸行事が多く、皇室のスケジュールが過密になる。
実際、今回の代替わりに伴う各部局の宮内庁幹部の顔ぶれをみると、侍従職では、ナンバー2の侍従次長に加地正人・東宮侍従長(65)が就き、その他の7人の侍従もいずれも東宮侍従からのスライド人事だ。
上皇職も同様に幹部クラスはいずれも侍従職OB。皇位継承順位1位の皇嗣となる秋篠宮さまとご一家を補佐する最側近の皇嗣職大夫には、これまで同家を支えてきた加地隆治宮務主管(66)が就く。
このほか部課長級の幹部には、定年延長をしてポストにとどめたり、他省庁との交流人事では宮内庁での在籍期間を延ばしたりして対応するケースも目立つ。
皇位継承の儀式は20年春に秋篠宮さまが皇嗣となったことを内外に明らかにされる「立皇嗣の礼」まで続く。スライド人事は一連の儀式・行事を乗り切るための暫定措置の側面が強く、「諸行事が落ち着いた段階で、外務省OBから将来の侍従長候補がやってくるのではないか」(宮内庁関係者)という見方も多い。