「令和相場」占う決算 中国と増税対策が焦点
国内の上場企業による3月期決算発表が23日に本格的に始まる。平成最後の決算発表ウィークのどこに市場関係者は注目しているのか。日本株の運用担当者を中心に聞き取り調査したところ、中国景気の回復度合いと企業の消費増税対策に目をこらす投資家が多かった。この2つのテーマが5月に始まる「令和相場」が堅調さを保てるのかどうかを左右しそうだ。
「VなのかLなのかを確認したい」。三井住友DSアセットマネジメントの金本直樹株式運用第一部部長が今週以降の決算発表で注視するのが中国景気の回復の上向きの角度だ。3月の中国の製造業の購買担当者景気指数(PMI)の改善が日経平均株価が心理的な節目となる2万2000円を回復する原動力になった。ただ23日午前の日経平均株価が前日比52円(0.2%)安となるなど上値が重くなってきた。背景にあるのが、中国は劇的な回復を示す「V字回復」ではなく、底打ちを示す「L字回復」ではないかとの懸念だ。
中国の景気回復度合いを見極めるには1~3月期よりも4~6月期に関する経営者の肌感覚が重要になる。市場の関心が高いのが23日午後に決算発表する日本電産だ。1月には業績の下方修正を発表して「尋常ではない落ち込み」、「46年間でもはじめて」と永守重信会長が中国経済についてコメントしたが、「この落ち込み具合がどの程度回復したのかを聞きたい」(アバディーン・スタンダード・インベストメンツの荒川久志インベストメント・マネジャー)との声がある。
24日の米建機大手キャタピラーの決算も中国の資本財需要を探るカギになりそうだ。1月発表の18年10~12月期決算は、中国を中心とするアジア・太平洋地域の建機の売上高が前年同期比4%減となり、同業のコマツや日立建機に連想売りが広がった。中国関連銘柄買い戻し相場の波にのり、コマツは昨年末比で約2割、日立建機は約1割上昇しているが、持続するかについて「中国の地方の公共工事に資金がついているかどうかがポイントになる」(ピクテ投信投資顧問の糸島孝俊ストラテジスト)との見方がある。
ファンドマネジャーが注目する中国以外の焦点が、10月の消費増税対策だ。仕入れなどのコスト増を最終製品やサービスに転嫁できる自信があるかどうかが重要になる。三菱UFJ国際投信の小山洋美チーフファンドマネジャーは「(裾野の広い)サービス業がどんな対策を打つか注視したい」と話す。アライアンス・バーンスタインの堀川篤日本バリュー株式最高投資責任者は「消費増税で需要が落ち込みやすい住宅メーカーが、人件費の上昇も含めたコスト高を吸収するために値上げを前提にした業績予想を出せるか」に注目する。
英国の欧州連合(EU)離脱や米中貿易摩擦などの不透明要因が多いなか、普段は高めに設定される投資家の業績予想の目線は今回はそれほど高くない。企業が堅実な業績を示せれば、日経平均の上値が軽くなるきっかけになるかもしれない。
(大西康平、佐藤亜美)