自民、参院選へ立て直し急ぐ 10年ぶり補選敗北
政権「緩み」警戒、衆参同日選の観測も
自民党は21日投開票の衆院大阪12区と沖縄3区の補欠選挙で、国政の補選として10年ぶりの敗北を喫した。同日実施された統一地方選後半戦では堅調に議席を獲得しているが、閣僚の失言など「長期政権の緩み」への指摘は多い。夏の参院選に向けて立て直しを急ぐ構えだ。安倍晋三首相が補選敗北の挽回をにらみ衆参同日選に踏み切るのではとの臆測も出ている。
自民党の二階俊博幹事長は21日夜、自民党本部で2補選の敗北について「大変残念な結果だ。謙虚に受け止めて敗因分析を急いで今後に備えたい」と記者団に語った。自民党が国政補選に公認候補を立てて敗れたのは野党だった2009年10月の参院神奈川、静岡両選挙区の補選以来だ。当時は民主党が1カ月前に政権交代を果たした勢いを維持していた。公明党が自民との選挙協力をためらうなど自公の枠組みも揺れていた時期だった。
自民、公明両党は今回の補選の結果と政権運営への評価を切り離したい考えだ。二階氏は「選挙だから多少の(評価の)影響はあるだろうが、即、政権の成否が問われているとは思っていない」と強調した。参院選への影響についても「ないとは言わないが、この結果を受けて候補者は緊張感を持って臨む。雪辱を果たしたい」と述べた。
公明党の斉藤鉄夫幹事長は「それぞれの選挙区の事情があった」と指摘した。大阪12区では先の大阪府知事・市長ダブル選を制した日本維新の会が勢いに乗った。沖縄3区は米軍普天間基地の移設先である名護市辺野古がある。移設問題が争点となった昨秋の沖縄県知事選も自公などが推した候補が敗れた。これらの流れを食い止められなかったとの分析だ。
補選や統一地方選を通じ、野党が党勢回復の糸口をつかんだとは言いがたい。ただ、今回の参院選で改選を迎える自民議員は、第2次安倍政権発足から半年後の13年参院選で勢いに乗って大勝しており、「反動減」を懸念する声は多い。改選67議席から1つでも減らせば、参院での単独過半数は維持できなくなる。
「政権の緩みと取られたところもあった」(斉藤氏)との指摘もある。4月上旬には塚田一郎国土交通副大臣と桜田義孝五輪相が失言で相次いで辞任した。7日投開票の4県の知事選は自民支持層が割れる保守分裂だった。自民党は補選敗北を契機に立て直しを図る。
首相に近い自民党の萩生田光一幹事長代行は18日、10月に予定する消費税率10%への引き上げを延期する可能性に言及し、その場合には「信を問う」必要があると指摘した。5月には新天皇即位でお祝いムードが期待され、トランプ米大統領の来日も予定される。
6月末には首相が議長を務める20カ国・地域(G20)首脳会議が大阪で開かれ、外交成果を強調しやすい。党内では首相が今後の経済情勢によっては、夏の参院選に合わせた衆参同日選や早期の衆院解散に踏み切るとの臆測が出ている。
二階氏は記者団に衆参同日選の可能性を問われると「今のところ考えていない」と述べるにとどめた。公明党の斉藤氏は「有権者がとまどう複雑な選挙だ。解散後にどういうことが起こるか分からず大きなリスクがある。好ましくない」と首相をけん制した。