世界一の反動? レッドソックス、低調な序盤戦
スポーツライター 杉浦大介
昨季世界一に輝いたレッドソックスが今季はどん底のスタートを切っている。4月16~17日に宿敵ヤンキースに連敗を喫し、19日のゲームを終えた時点で7勝13敗でア・リーグ東地区の最下位。首位を走るレイズにすでに7ゲーム差をつけられている。
■打線は不振、ブルペンも手薄に
「良いベースボールができていない。ピッチング、オフェンス、守備、走塁のすべての面で安定していない。もっと整備していかなければいけない」
ニューヨークでのヤンキース戦の際にアレックス・コーラ監督が述べていた通り、レッドソックスの誤算を挙げていったら枚挙にいとまがない。
昨季のア・リーグMVP、ムーキー・ベッツは打率.216と低調。ラファエル・ディバース、スティーブ・ピアース、ジャッキー・ブラッドリー・ジュニア、エドゥアルド・ヌネスといった主力打者も軒並み不振に陥っている。ブルペンも手薄になり、昨季限りでチームを去ったクレイグ・キンブレルを引き留めなかった判断を正当化するのは難しい。そして何より、最も低迷しているのは先発投手陣だ。
クリス・セール 0勝4敗 防御率8.50
リック・ポーセロ 0勝3敗 防御率11.12
ネイサン・イオバルディ 0勝0敗 防御率6.00(右肘を痛めて20日に故障者リスト入り)
エドゥアルド・ロドリゲス 1勝2敗 防御率7.20
デビッド・プライス 1勝1敗 防御率3.79
「ごまかすつもりはない。今の僕はひどいものだ。僕の家族、チーム、そしてファンにとっても恥ずかしいこと。最悪だ」
16日のヤンキース戦で5回4失点で敗れた直後にセールはこう吐き捨てた。実際、オールスター・ゲーム選出7度という実績を考えれば、この左腕エースの乱調は信じられないほど。今オフに5年1億4500万ドルの新契約を結んだ直後だというのに、最近は速球の著しい球速低下が話題になっているありさまだ。
■先発陣は心身両面で昨季の疲れ
セールに限らず、投手全体に心身両面の疲れはあるのだろう。昨季のレッドソックスはポストシーズンでヤンキース、アストロズ、ドジャースという強豪を相手に11勝3敗と圧倒的な強さを示した。その過程では、チーム唯一の弱点とされたブルペンを助けるべく、セール、ポーセロ、イオバルディ、プライスらがみな先発とリリーフの両方でフル回転した。
特にワールドシリーズではイオバルディが第1、2、3戦に連続でリリーフ登板し、先発の軸を担ったプライスも第3戦の九回、セールも第5戦の九回に救援登場した。優勝するチャンスはめったにないのだからこうした起用法が間違っていたとは思わないが、今になってその反動が出ているとしても驚くべきではないだろう。
依然として多くのタレントを擁するレッドソックスが、いずれは浮上してくると考える関係者は少なくない。その一方、いわゆる"栄光の二日酔い(Championship Hangover)"が重症だとすれば、厳しい戦いがもうしばらく続くかもしれない。
レッドソックスは2013年にもワールドチャンピオンに輝いているが、その翌年は今季と同様に苦しみ、夏までにジョン・レスター、ジョン・ラッキー、アンドリュー・ミラーといったベテランを次々と放出した苦い歴史がある。まだ気が早すぎるが、5年前と同様、いずれ何らかの大きな動きがないとも限らない。だとすれば、苦しむ王者の動向からもうしばらく目を離すべきではないのだろう。