米銀の高収益 曲がり角に、融資増も利ざやに影
金融株は上値重く
米金融機関の高収益が曲がり角に差し掛かっている。17日に出そろった2019年1~3月期の決算ではJPモルガン・チェースなどの純利益が過去最高となったが、収入の頭打ち感が鮮明になってきた。利ざやが伸びないほか、トレーディング収益も振るわないためだ。経営者から先行きに慎重な声も出始め、投資家は力強い成長シナリオを描けなくなっている。
バンク・オブ・アメリカが16日発表した19年1~3月決算では1株利益が0.70ドルと事前のアナリスト予想(0.66ドル)を上回った。ところが、その後開いた株式市場では一時3%安まで売り込まれた。
引き金となったのがアナリスト説明会での幹部発言だ。ポール・ドノフリオ最高財務責任者(CFO)は「19年の経済成長は緩やかになり金利はもっと低くなりそうだ」と説明。純金利収入の伸びが鈍化する見通しも示した。1~3月期の決算もコスト削減が寄与した面も大きく、市場は「予想以上の最高益」を額面通り受け取らなかった。
商業銀行を主力とする米金融機関にとって利ざや縮小は共通の悩みだ。米国では3月、短期金利が長期金利を上回る「逆イールド」が話題を集めた。米連邦準備理事会(FRB)による利上げを背景に短期金利が上昇した一方、中長期の成長期待が高まらず、長期金利は2.5%程度にとどまる。貸出金利と調達金利の差である利ざやは18年後半~19年前半をピークに右肩下がりになるとの予想が増えている。
3年ぶりの伸び率の融資にも不透明感が漂う。主要500企業の1~3月の純利益は11四半期ぶりに減少に転じることが見込まれ、資金需要が陰るおそれがある。個人の借り入れも鈍り気味。シティグループの1~3月期の融資の前年同期比伸び率は1%にとどまる。
株式や債券など金融商品の売買を仲介するトレーディング事業の不振も目立つ。JPモルガン・チェースやモルガン・スタンレーなど主要大手5行の同事業はそろって前年同期に比べて減収。19年の米株市場は上昇基調にあるが、顧客の市場取引は低調なままで、手数料収入が伸びなかった。
中でも厳しかったのがゴールドマン。1~3月期の同事業の営業収益は前年同期に比べ18%減に沈んだ。デービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)は「ボラティリティー(相場変動率)が歴史的低さとなり、取引が停滞した」と語った。
同じく市場依存度の高いモルガン・スタンレーが17日公表した19年1~3月期の純利益は前年同期比9%減った。ジェームス・ゴーマンCEOは「19年のスタートはゆっくりだった」と述べた。
米ファクトセットが集計したアナリスト予想では、大手6行の19年の純利益は18年の1%増にとどまる。20年の増益率もわずか2%だ。アナリストは一般に右肩上がりの予想を描く傾向が多いが、銀行に関しては明るい見通しを立てられない。
18年の米銀の収益回復は金利上昇に加え、減税による景気回復という追い風もあった。投資家の銀行株への厳しい見方は米景気そのものへの不安を映している面もありそうだ。(ニューヨーク=後藤達也、宮本岳則)