トランプ氏、サウジ支援継続へ拒否権 議会決議を覆す
【ワシントン=中村亮】トランプ米大統領は16日、イエメン内戦に介入するサウジアラビアへの軍事支援の停止を求める議会決議に拒否権を発動したと発表した。イエメンの武装組織からサウジを防衛するためだと説明した。トランプ氏が拒否権を発動するのは2回目。トランプ氏が率いる与党・共和党からも決議に賛成する議員が出ており、外交政策をめぐる隔たりを改めて浮き彫りにした。
トランプ氏は議会に宛てた書簡で、イランを後ろ盾とするイスラム教シーア派の武装組織「フーシ」がサウジを攻撃していると懸念を示した。「軍事支援を縮小する試みは2国間関係を害する」と議会を批判。武器売却などで経済・安全保障協力を深めているサウジに配慮する姿勢をにじませた。米軍は軍事情報の提供や輸送支援を通じてサウジ軍の後ろ盾となってきた。
議会は米政権のサウジ接近をけん制するために支援停止を求める決議案を可決していた。2018年10月にサウジ人著名記者の殺害に同国政府が関わった事件では、トランプ氏は事実上の最高権力者のムハンマド皇太子の責任を問わなかった。一方で議会上院は政権の姿勢を非難し、ムハンマド皇太子の責任を問う決議案を全会一致で可決した。
トランプ氏は3月中旬にメキシコとの国境沿いの壁建設に関連し、初めて拒否権を発動して議会の決定を覆した。拒否権を使う機会が増えるほどトランプ氏と共和党の溝が深まっていることを意味する。