堀硝子 自動車ガラスへの部品接着、1分で可能に
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堀硝子(神奈川県厚木市)は自動車用のガラスに部品を取り付けることなどを手がける。取り付けには専用接着剤を用いるが、特徴はスピードだ。通常は丸1日の乾燥が必要なところ、わずか1分で完了する。独自の接着剤と工法を生かし、アジアを中心に国内外のメーカーに供給している。
車体に合わせてカットされたガラスに接着剤を塗り接着する。近年は車載カメラの設置が進み、取り付け部品の約8割はカメラをはめ込むためのソケットだ。ドアの窓の開閉に必要な装置も取り付けている。
接着には一般的にウレタン系の接着剤を使い、同社も使用していた。だが、乾燥に丸1日かかり自動車メーカーから「車体の製造スピードに合わせて部品を接着してほしい」との要望を受け、2012年ごろから開発に取り組んだ。
高本勝己社長は「製造ラインのスピードに合わせるには、1分以内に接着しなければ無理だった」と振り返る。接着剤メーカーと組み接着剤の素材をシリコン系に変えたが、24時間から1分への短縮は容易ではなかった。電子レンジのように高周波を用いたりレーザー光を当てたりして乾燥時間を短縮しようとしたが、うまくいかなかった。
15年にたどり着いたのが「過熱水蒸気工法」だ。熱を加えた水蒸気を吹きかけ、接着剤の化学反応を促進して硬化を早める仕組みだ。国内初の技術だったため、自動車メーカーによる安全検査を経て、18年7月にようやく採用された。
短時間で接着することでガラスへの部品取り付けが完成車製造ライン上ででき、自社工場での取り付けに比べ輸送などの時間やコストを削減することができる。自動車製造の受注は新車ごとに他企業との競争になる。接着技術の工夫はすべて「ライバル企業に勝ち、採用にこぎつけていく」(高本社長)ためだ。さらに「30秒への短縮にも挑戦したい」(同)。一層の時短を目指す。
ただ、新工法を導入しているのは国内外15拠点のうち九州工場のみ。今後は関東や中国の工場にも広げていきたいという。18年3月期の売上高は約70億円だったが、過熱水蒸気工法の導入で今期以降、さらに伸ばすことを目標にする。
(浦崎唯美子)